金正恩後継は「与正」有力と断じるのは時期尚早 他に3人もいる候補者の名前

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対抗馬は少なくとも3人

 だが、少なくとも昨年までは、北朝鮮の統治システムは機能していた。それが今年に入って急激な変化を見せる。

「4月20日に韓国のデイリーNKが『金正恩氏が心血管系の手術を受けた』とスクープ、翌21日にはCNNが手術による健康不安説を報じます。それから2回、金正恩氏は公の席に姿を現しましたが、肉声が報じられなかったことなどから、いずれも影武者説が囁かれました」(同・重村教授)

 そもそも一国のリーダーの動静が、15日とか20日おきにならないと報じられないのだ。これこそ異常事態と言っていいだろう。

「金正恩氏だけでなく、首相や軍の幹部も同じように姿も見せず、肉声が報じられることもありません。北朝鮮という国家の統治システムは止まってしまいました。これを金正恩氏の健康不安説を裏付けるものと判断する専門家がいるのは、ある意味で当然のことです」(同)

 デイリー新潮は6月19日、「金正恩の“健康不安説”が再燃 きっかけは労働新聞が使った“ある文言”」の記事を配信した。

 党機関紙「労働新聞」が6月10日に掲載した記事に《偉大な党中央と思想の志も歩みも共にし》という“異例の表現”が使われたのだ。

 重村教授によると、「党中央」は後継者の婉曲表現だという。つまり労働新聞は、「金正恩氏の後継者が決まりました」と暗に匂わせた可能性があるのだ。

 しかも、6月前半だけで3回も報じたという。平壌では、たちまち噂が広まった。すると当局は打ち消しに躍起となり、19日の労働新聞は「党中央」は「党中央委員会」の意味だとする社説まで、わざわざ掲載した。

「平壌が、かなり混乱している証拠です。言論統制下にある国家は、噂がたちまち広がるものです。北朝鮮もそうで、特に首都の平壌は“噂の帝国”と言えます。そして6月10日に掲載された労働新聞の記事から、『後継者が決定した』との噂が取り沙汰されているわけです。しかしながら、その後継者は与正氏を指すと判断するのは、あまりに早計です。北朝鮮には他にも、トップの座を狙える実力者が、少なくとも3人はいます」(同)

 重村教授によると、1人目は金正哲[キム・ジョンチョル](38)だ。金与正の血の繋がった兄にあたる。ギターの名手として知られるエリック・クラプトン(75)の大ファンという逸話をご存知の方もおられるだろう。

 2人目は、ハンガリー、ブルガリア、フィンランド、ポーランド、チェコなど欧州各国の特命全権大使を述べ31年にわたって歴任した金平一[キム・ピョンイル](65)だ。

 父は金日成[キム・イルソン](1912~1994)、母は2番目の妻である金聖愛[キム・ソンエ](1924~2014)だ。金正日から見ると、金平一は異母弟にあたる。

 そして3人目は、秘密のベールに包まれた金日成の隠し子だ。金賢[キム・ヒョン]と張賢[チャン・ヒョン]という2つの名前を持つ。

「金賢氏は金日成氏が晩年、看護婦に生ませたとされています。1971年生まれと言われ、一時、権勢を誇った張成沢[チャン・ソンテク](1946~2013)氏と、金敬姫[キム・ギョンヒ](74)の養子だったことから張賢とも呼ばれたのです。そして金敬姫は後継者を決める家族会議長の権限を持ちます」(同)

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