朝ドラ「エール」のスピンオフは遊びすぎ? 仕掛けるタイミングを誤ったという指摘も

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 NHKの朝ドラ「エール」で突如始まったスピンオフ・ドラマ。2週にわたって放送した後、“コロナ休止”に入るという。もっともその評判はいまひとつ。業界からは、仕掛けるタイミングを間違えたとの声がしきり――。

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《あの世では、年に二回/今でいうジャンボ宝くじがある/一等はもちろんお金ではない/一泊二日地上に帰る権利である》

 6月15日の「エール」は黒画面に白字幕で始まった。おどろおどろしいオープニングにビックリした視聴者もいたようだ。民放プロデューサーも言う。

「何事かと思いましたよ。前週(第11週)の金曜日(12日)に、窪田正孝演じる主人公・古山裕一の父・三郎(唐沢寿明)が亡くなり、大きな節目でしたからね」

 ご覧になっていない方のために簡単に振り返ってみよう。裕一は作曲家になるため故郷の福島を飛び出して以来、一度も帰省していなかった。ようやくヒット曲を出した彼の元に、恩師から福島の小学校校歌を作曲して欲しいと依頼がくる。校歌完成披露会に招待された裕一は妻・音(二階堂ふみ)と娘を連れて久しぶりに故郷へ。だが、実家の呉服屋はすでに畳んでいた。家業を継いだはずの弟・浩二は市役所勤めとなり、好きなことをして生きている兄を恨んでいた。末期の胃癌にある父は、浩二に家督を譲ると言い残し、逝った。兄弟は和解し、裕一は東京へ戻る――。

「まさに新しい章へと移るタイミングで始まったのが、15日からのスピンオフでした。字幕の後には、『ということで、今週は特別企画。突飛な設定や裕一と音の出ない回もございますが、いつもと違うエールをお楽しみください』とナレーション。15、16日は『父、帰る』と題して、10年前に死んだ音の父(光石研)が、くじが当たって現世へ帰れるという話。そこそこ楽しめるコメディでしたが、前週までと比べると、何でこんなことやってるんだろうという気になりました」(同)

 17日は、裕一たちが行きつけの喫茶店『バンブー』のマスター夫の馴れ初めが明かされた。

「もはや本筋とは全く関係もないし、主人公もほとんど出てきません。おかげで視聴率も19・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)で、5月6日(19・7%)以来の20%割れとなりました。『エール』は週平均の視聴率で見ると、最初の3週こそ19%台でしたが、4~6週は20%台、7週以降は21%台と尻上がりに良くなっていた。ところが、わざわざここへ来て、本筋とは関係のない話で数字を落とすのは痛いですね」(同)

大河と一緒に休止すべきだった

 これまで朝ドラにスピンオフなんてあったのだろうか。

「昨年前期の『なつぞら』では、全話終えた後の11月に、高畑淳子と山田裕貴を主演にBSプレミアムのゴールデンで2話放送しました。本編の放送中にスピンオフをかけて視聴者を戸惑わせたのは前作『スカーレット』。第21週に“スペシャル・サニーデイ”と題して、林遣都と福田麻由子の夫妻の物語を1週間流しました。このときは本編が盛り上がってきたところに突然、主演・戸田恵梨香が不在となったため、NHKと脚本家の水橋文美江氏との確執まで囁かれました」(同)

「エール」の場合、放送前に脚本家の林宏司氏は降りてしまったが……。

「第11週で裕一が節目を迎え、“今後は戦争など激動の時代に突入するので、その前にちょっと遊びの週があっても良いのではないか”と制作統括の土屋勝裕チーフプロデューサーが語ったそうですけど、遊びすぎですよ。脚本家の林さんとこじれたのも、そういうことなのかと勘ぐってしまいます」(同)

 18、19日に放送された、柴咲コウ演じるオペラ歌手・双浦環のパリでの駆け出し時代の評判は良かったようだが……。

「これだって、全話終了後に、じっくり放送すればいい話だと思います。制作の立場を慮ると、いいキャラが登場しすぎてしまったために、それぞれの落とし前に困った、というのが本音じゃないでしょうか。有名どころを使っているにもかかわらず、その使い方はもったいないほど少ないですからね。志村けんさんだって存命ならば、スピンオフでも出演したでしょう。もしかすると制作費の節減かもしれませんが……」(同)

 贅沢な悩みではないか。

「大河『麒麟がくる』は、6月7日の放送を最後に中断しています。それと同じ週の12日の放送で、『エール』も一緒に中断しておけば良かったと思います。せっかくコロナ前に撮ったスピンオフを置いておくわけにもいかず、放送したんでしょう。来週の第13週もスピンオフを放送し、6月29日から休止になるようですが、民放が続々と新作の放送を始めて数字を取っている中、『エール』は何、暢気なことやってんだ、という印象しか残りません。休止の間は第1話から再放送をするようですが、それならば、大河と一緒に休止して、とっとと第1話に戻り、視聴者が再開に飢えてきた頃に、スピンオフを流したほうが喜んで受け入れられたはずです。仕掛けるタイミングを間違えたといわれても仕方がないのでは」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年6月22日掲載

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