「漫画村」摘発後も消えぬ海賊版サイト 『ラブひな』作者「はらわたが煮えくり返る」

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 海賊版サイト「漫画村」が“全盛”だった2~3年前のこと。

「先生の作品、『漫画村』で読んだんですけど、次に出るのはいつですか」

 さるイベントで著者にそう話しかける若者が……。周囲は著者の顔をまともに見られず、場を沈黙が支配したという。昨年、「漫画村」が摘発された後は、さすがにそうした例はなくなったそうだが、

「“無料のネット版はいつですか”というような問い合わせは今でもあります」(中堅出版社のマンガ編集者)

 出版関係9団体で構成される「出版広報センター」の伊東敦・海賊版対策ワーキンググループ座長も言う。

「ネット上には“割れ”というスラングがある。コンテンツはタダであれ、というスタンスの人たちのことを指します。彼らは一定数いて、コンテンツを正規で買う人を“購入厨”と蔑んで笑う。金を出して買うなんてバカだ、と。今は消滅しましたが、『はるか夢の址(あと)』という、日本最大級の海賊版グループが運営していたサイトの宣伝文には、こうありました。“面白くないコンテンツには金を払う必要はありません。これがネットの自由なんです”」

 海賊版の跋扈以降、若者の間に急速に広まりつつある、マンガはネットで無料で読める、あるいは読めるべきだ、との“誤解”――。

 コロナ禍でほとんど注目されなかったが、著作権法の改正案が議論され、この6月5日に成立した。これはそんな「タダ読み」を防ぐための一手とも言える法律なのである。

「少しずつですが、これで海賊版の問題が解決に向かえばいいな、と思うばかりです」

 と言うのは、マンガ家の里中満智子さん。

『天上の虹』などのヒット作で知られる里中さんは、日本漫画家協会の理事長として海賊版対策に尽力してきた。

「若いマンガ家さんのチャレンジが違法サイトで閉ざされてしまうのは残念でなりません。これを機に、読者の方々も面白いマンガを読みたいならば、健全なサイトで読んで、作者を支えていただきたい」

「海賊版」の被害が広く知られるようになって久しい。前出の出版広報センターによると、国内での総被害額は2013年度で年間500億円(経産省の調査)。昨年、摘発され、大きな話題となった「漫画村」による被害額は実に3200億円、前出の「はるか夢の址」のそれも731億円となる。これだけの金額分のマンガがタダで読まれてしまったということになる。

 海賊版といってもさまざまな類型がある。例えば、「オンラインリーディングサイト」。「漫画村」が代表で、サイトにアクセスするとストリーミングで作品が読める。「漫画村」で注目を集めたが、もともと数は少ない。

 他方、日本で一貫して主流となっているのが「リーチサイト」である。「はるか夢の址」がそれだ。サイトにマンガはなく、リンクが張ってある。ユーザーは自分が読みたい作品のリンクをクリックすると、ネット上の「貸し金庫」である「サイバーロッカー」にジャンプ。そこに違法にアップロードされたマンガをダウンロードして読む、という仕組みだ。

 その他にもYouTubeなどにマンガを紙芝居化して投稿する「動画投稿サイト」、「ネタバレサイト」、「P2P」、「詐欺サイト」など、あの手この手の類型がある。

 今度の改正案が狙い撃ちにしたのは、このうち主流を占める「リーチサイト」。海賊版に利用者を誘導する行為そのものを規制した。また、ユーザーについても、違法ダウンロードを禁止。ネット上に無断掲載されたマンガなどを、海賊版と知りながらダウンロードする行為を違法とし、悪質な場合は刑事罰も科されることに。これまで映像と音楽に限定されていた規制対象が拡大されたのである。

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