金正恩の“健康不安説”が再燃 きっかけは労働新聞が使った“ある文言”

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金与正も協力?

 こうなると、記事にある《前倒し》という単語も意味ありげだ。北朝鮮ウォッチャーが「すわ一大事」と色めき立つのは当然である。

「労働新聞が『後継者が決まった』ことを暗示した可能性があるわけです。事実だとすれば、やはり正恩氏の体調は良くないということでしょう。また5月に金正恩氏は、中国の習近平氏(67)に『口頭親書』を送ったと報じられました。これに健康不安説を重ね合わせると、正恩氏は正式な親書に自筆で氏名をサインできない状態なのかもしれません。果たして正恩氏は元気なのか、そうではないのか、米韓日の情報機関は体調を探ろうと全力を傾けていると思います」(同・重村教授)。

 ここ数日、金正恩の妹である金与正[キム・ヨジョン](31)の言動が注目を集めている。開城にある連絡事務所の爆破や、軍部隊の展開に言及するなど、風雲急を告げる印象も強い。

 原点は与正が韓国を痛罵したことだった。デイリー新潮は6月15日、「金与正が脱北者を『人間のクズ』『ばか者』呼ばわり……北朝鮮“ヘイト談話”の効果」の記事を配信した。

《6月4日、韓国在住の脱北者団体が北朝鮮を批判するビラをアドバルーンに載せて飛ばした行為に対して、金正恩の妹で党第一副部長の金与正が談話を発表した。中身は、「人間の値打ちもないくず」「汚い口をつぐまず吠え立てる連中」……と、聞くに耐えない罵詈雑言の嵐だった》

 なぜ、こんな汚い言葉を使うのか。重村教授は「可能性は3つあり、2つは正恩氏の健康問題とリンクしているシナリオです」と解説する。

 1点目は韓国が北朝鮮との“密約”を反故にしようとしていることに、北朝鮮が猛烈に抗議しているという可能性だ。

「2018年に文在寅[ムン・ジェイン]氏(67)と金正恩氏は南北首脳会談に臨みましたが、韓国側は北朝鮮側に裏金の提供を約束して会談が実現しました。ところが、アメリカ側に発覚してしまい、資金提供を止められてしまったのです。これに北朝鮮は抗議するために、与正氏が罵声を浴びせたのかもしれません」(同・重村教授)

 北朝鮮が連絡事務所を爆破したのは6月16日。業を煮やして「金を払え」とデモンストレーションに踏み切ったと考えれば、腑に落ちる点も少なくない。

 2点目は、後継者が決まったことが、与正にプレッシャーを与えた可能性だ。

「北朝鮮の勢力争いは激しいものがあります。金与正を推す勢力もあれば、反対勢力も存在します。勢力争いに後継者問題が重なり、与正氏が“政治的な成果”を出す必要があったのかもしれません。彼女はビラ問題で韓国を罵倒し、ビラの配布を停止させました。反対勢力を黙らせるには、充分な“成果”でしょう」(同・重村教授)

 最後の可能性は“陽動作戦”だという。与正が身体を張って、自分に注目を集めさせているというシナリオだ。

「労働新聞が『党中央』と書いたということは、金ファミリーが決定した後継者を、軍部も了承した段階かもしれません。とはいえ、金正恩が病に倒れ、権力を後継者に委譲する必要があるとなると、やはり国内に様々な動揺が起きていておかしくないでしょう。後継者の権力基盤を盤石なものとし、正式に発表されるまでの間、正恩氏の健康問題に対する国内外の関心を少しでも逸らすため、韓国を口汚く罵ったかもしれません」(同・重村教授)

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