マスクバブル崩壊で業者の悲鳴 値段は10分の1に下落、在庫は500万枚という地獄

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値段が10分の1に…

 ここまでマスクが値崩れしてしまうと、「バブル」に乗ろうと新規参入した業者の中には、たいへんな目にあった方もいます。今回、匿名を条件に取材に応じてくれたある業者は「もうマスクには二度と手を出しません」と、次のように証言します。

「もともとネット通販事業を営んでおり、中国からの流通ルートを持っていました。コロナでマスクが不足していると聞き、3月下旬にマスクの輸入をはじめました。仕入れ値は1枚30円ほどで、最初は1枚100~120円で販売するつもりでした。ところが、参入するのが遅すぎたのでしょう。早々に値崩れが起き、やむなく4月に30~35円まで一気に値を下げました。これがゴールデンウィーク明けには25~28円にまで値下げすることになり、今や15~17円で何とか売っています」

 当初の予定から、値段が10分の1近くになってしまったわけです。しかも、ビジネスである以上、かかる「コスト」ももちろんあって……。

「ウチの場合、50枚入りの箱で中国から商品が送られてくるのですが、これが結構かさばるんです。現状は、マスクを保管しておくために、大手の物流倉庫を借りていますが、今も倉庫には500万枚ほどの在庫が眠っています。まだ今後も需要はあると思うので、10枚や5枚に小分けして売るつもりです。その作業のために人を雇うので、コストや手間はかかってしまいますけれど」(同)

 マスクを生産する中国でも、すでにバブルが崩壊しているとの話もあります。1月以降、マスク関連事業に新規参入した中国の業者は数万社と言われ(1万社とも7万社とも。海外報道ベースなので、はっきりとした数字はわからず)、業者の増加に伴いマスクの原材料であるメルトブロー不織布の値段は一時40倍にもなったそうです。

 ところが中国でコロナウイルスの感染拡大はおさまり、また先述した“質”を理由に、日本などへの海外輸出は奮いませんでした。結果、メルトブローの値段は落ち着くどころか、モノによっては、コロナ禍前より安くなっているともいわれています。

 6月8日、WHOはアフリカでコロナ感染が急増していると警鐘を鳴らしました。まだマスクが浸透していないアフリカで需要が高まる、あるいは日本に第2波が来たりすれば、マスクの値段はふたたび値上がりするかもしれません。もちろん、そんな日が来ないことを祈っています。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月16日掲載

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