「太田雄貴」会長就任で強化費が消えた! メダリスト「続けられない…」

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「想定外の出費」

 斯様(かよう)な人物評を聞く限り、太田会長はボクシングやテコンドーなど、これまで世を騒がせてきた競技団体の“ドン”たちとは相異(あいこと)なるように見える。長年トップの地位に恋々とし、アスリートたちを“力技”で屈服させ組織を私物化、不祥事の温床としてきた“ドン”たち。翻ってフェンシング界では、「改革の騎士」がトップに居ながら、なぜ選手たちは苦境に立たされてしまっているのだろう。

 フェンシング協会に属するアスリートは、匿名を条件にこんな話を打ち明ける。

「太田会長が率いる協会に対して、賛否を問われたら『否』と答える選手が多いのでは。21名いる協会の役員の中にも、会長が引っ張ってきた子飼いが多く、普段から選手の声に耳を貸さない。そこへ、遠征費が全て自腹となったことで、いよいよ選手たちが声を上げたのです」

 協会には日本代表クラスの選手たちが集う「アスリート委員会」、いわゆる「選手会」が存在する。実は彼らは協会に対して説明を求め、5月28日にオンライン会議の形で極秘裡に「緊急説明会」が行われたのである。

 説明にあたったのは、太田会長の側近で、警視庁に所属する福田佑輔・強化本部長(38)をはじめ、理事や事務局長などの協会幹部たち。彼らは今年1月にも、選手たちに遠征費が「自己負担」となる理由を説明する場を設けていたが、そこでの釈明は到底納得のいくものではなかったという。

 1月の会に参加したある選手が振り返るには、

「協会幹部の説明を聞いた時には耳を疑いました。昨年、ハンガリーの首都・ブダペストで開かれた世界選手権で『想定外の出費』があったと言われたのです。協会は選手団(総勢56名)を派遣するため、旅行会社に手配を依頼。ところが、渡航費や滞在費などの金額が、当初の見積もりの2倍、2800万円にまで跳ね上がったというんです。しかも、協会は言われるがままその金額を支払い、選手に使うお金がなくなったとか。そんな説明を素直に受け取ることができるでしょうか」

 別の選手はこう憤る。

「協会の人間は、『見積もり額より倍になって、オレたちもびっくりしちゃった』なんて調子で、まるで危機感を持っていませんでした。“所属企業やスポンサーからカネを貰ってこい”という態度が滲み出ていましたが、選手からすれば、所属先にシーズン途中でお金を無心することは大きな負担。とにかく結果を出さなければ、来季は契約を打ち切られる可能性もある。そうした心理的な負担を協会は選手にかけているのです」

 で、今回5月のオンライン説明会では、件(くだん)の「ブダペスト事件」について驚愕の事実が判明したという。

 この選手が続けるには、

「想定外出費の実態は、あまりに杜撰(ずさん)などんぶり勘定でした。見積もりは旅行会社に任せていたが、参考にしていたのは一昨年に行われた中国での世界選手権への派遣費用だったのです。アジア圏と比較すれば、欧州は物価も高く渡航費用や滞在費も段違い。また東京五輪での出場枠を増やす目的で派遣選手の数も増やしたのに、そうした点への考慮がされていなかった。しかも、協会は見積もりが倍かかることを派遣前に把握していながら、見切り発車していたことも発覚しました」

 さらには、協会幹部の不祥事も議題に上がったという。説明会に先立ち、代表選手たちは協会への要望を書面の形で提出しており、その中には、こんな内容も。

「件の世界選手権の折、試合の合間に、帯同していた強化本部長と理事がホテルのバーで飲酒をしていたのです。おまけに、肝心の試合では日本チームが新ルールの認識不足で反則負け。緊張が緩んでいたとしか思えません。さらに、強化本部長は女子選手に対してセクハラ発言をしていたとの指摘まであった。彼に対して協会は処分を下していないのでは、という質問でした」(同)

 これについて協会側は、

「(強化本部長に)厳重注意というような形で、一応処分をしている」

 と答えるのが精一杯だったが、何よりも選手たちを落胆させたのは協会幹部からのこんな説明だった。

「太田会長になって大会(全日本選手権など国内大会)の赤字が大幅に消え、プラスマイナスゼロで運営していけるようになった。ここからスポンサーが増えて協賛金が増えれば、ようやく皆さんにも直接繋がっていくと思う。もしかしたら皆さんが現役のうちは無理かもしれないが、5年後、10年後には強化費としてお金を落とせるんじゃないか、というのが正直なところです」

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