「藤浪晋太郎」「中村奨成」…過去10年に甲子園出場した高校球児“ベストナイン”を独自選出

スポーツ 野球

  • ブックマーク

 2010年の興南、12年と18年の大阪桐蔭と3度の春夏連覇が達成された2010年代の高校野球。甲子園には多くのヒーローが誕生したが、改めて過去10年に登場した高校球児でベストナインを選出してみたいと思う。対象は春、夏の甲子園出場経験があることを条件とし、また、「卒業後の活躍度合い」などは考慮せずにあくまでも「甲子園での活躍度合い」から選出した。

・投手:藤浪晋太郎(12年大阪桐蔭)
次点:島袋洋奨(10年興南)、奥川恭伸(19年星稜)

 数多くの好投手が登場したが、一人を選ぶのであればやはり藤浪となるだろう。選抜は5試合(1試合はリリーフ)、夏は4試合に登板し、その全ての試合で150キロ以上のスピードをマークした。スピードだけでなく変化球も一級品。特に最後の夏は4試合、36回を投げて3失点(自責点2)、49奪三振と全く危なげないものだった。長い高校野球の歴史でもこの夏の藤浪の安定感は突出している。

次点は島袋と奥川の二人。島袋は春夏全試合に先発し、藤浪を上回る11勝をマークした。スタミナ面では藤浪と並ぶものがあったと言えるだろう。奥川はスピードに加えて抜群のコントロールが光り、智弁和歌山戦のピッチングは歴史に残るものだった。人気の面では、吉田輝星(2018年金足農)も候補となるが、ピッチングの内容的には少し劣り、次点からは外した。

・捕手:中村奨成(17年広陵)
・次点:森友哉(12年・13年大阪桐蔭)

 捕手は中村を選出。甲子園に出場したのは3年夏の1回だけだったが、6本塁打、17打点、塁打数43と3つの大会新記録を樹立した。安打数19本も大会タイ記録である。ホームランの方向もライト2本、センター2本、レフト2本と見事に打ち分けた。バッティングだけでなく、抜群のフットワークを生かしたスローイングも素晴らしく、甲子園の歴史に名を刻む活躍だった。

 次点は藤浪とバッテリーを組み、春夏連覇にも大きく貢献した森。2年春から4季連続で甲子園に出場し、通算5割近い打率を残した。その打撃技術は、強打者を多く輩出している大阪桐蔭の中でもトップだ。

・内野手
一塁手:野村佑希(17年・18年花咲徳栄)
次点:岡本和真(14年智弁学園)、入江大生(15年・16年作新学院)

二塁手:峯本匠(13年・14年大阪桐蔭)
次点:坂之下晴人(17年大阪桐蔭)

三塁手:我如古盛次(10年興南)
次点:横尾俊建(10年・11年日大三)

遊撃手:根尾昂(17年・18年大阪桐蔭)
次点:北條史也(11年・12年光星学院【現・八戸学院光星】)

  内野はファーストから順に野村、峯本、我如古、根尾の四人を選出した。ファーストの野村は2年時に出場した夏の甲子園で4番として5割を超える高打率を残して全国制覇に貢献した。3年時はエースを務めながらも2試合連続ホームランを放っている。次点の岡本は、春夏合わせて3試合の出場ながら超高校級の打撃を披露。入江も3年夏に3試合連続ホームランを放つ活躍を見せたが、トータルで野村を選んだ。

 セカンドの峯本は2年夏から3季連続で甲子園に出場し、いずれもホームランを放ち(うち1本はランニングホームラン)、3年夏は甲子園優勝にも大きく貢献している。2番打者ながら長打力も申し分なく、積極的な走塁も光った。次点は大阪桐蔭の後輩の坂之下。セカンドの守備は名人級で、幾度もチームを救うプレーを見せた。打っても下位打線ながら、3年春の選抜決勝では一発を放ち、優勝に貢献している。

 我如古は3番、サードとして春夏連覇を達成したチームを牽引した。選抜では大会タイ記録となる13安打をマーク。夏の甲子園の決勝戦で試合の行方を決定づける、スリーランを放つなど5割近い打率を残している。興南で投手の主役が島袋ならば、野手の主役は我如古だったと言える。次点の横尾も4番打者として3年夏の甲子園では6割を超える打率を残し、全国制覇に大きな役割を果たした。

 根尾は下級生の頃は外野と投手の兼任だったが、最終学年はショートを任されて攻守にチームを引っ張った。3年夏には3本塁打を放ち、春夏連覇の立役者となる。次点の北條も3年夏に4本塁打を放ったが、投手をこなしながらもショートで素晴らしいプレーを見せた根尾を選んだ。

・外野手
高山俊(10年・11年日大三)
オコエ瑠偉(15年関東一)
藤原恭大(17年・18年大阪桐蔭)
次点
長野勇斗(13年・14年三重)
松本哲幣(15年敦賀気比)
井上広大(19年履正社)

 高山はチームメイトだった畔上翔や横尾俊建に比べると、注目度は高くなかったが、3年時に出場した春夏の甲子園でいずれも5割を超える打率をマーク。特に夏は準決勝、決勝で2試合連続ホームランを放って打線を牽引した。また打つだけでなく、外野の守備でも目立つ活躍を見せている。

 オコエは3年夏の出場のみだったが、そのスピードで甲子園を席巻した。1回戦で放ったスリーベースの三塁到達タイムは11秒を切り、外野の守備でもセンターの頭を超える打球をギリギリで好捕するなど印象の強さではナンバーワンだ。藤原は根尾とともに下級生の頃から中心選手として活躍。最後の夏は4番に座り6試合で12安打、3本塁打をマークしている。甲子園通算5本塁打は、先輩の森友哉と並んで左打者で最多タイ記録である。

 次点の三人も紹介したい。長野は抜群のスピードが光ったトップバッター。最後の夏は打率5割、14安打と大活躍を見せてチームを決勝進出に導いた。松本は3年春の選抜、準決勝で史上初となる2打席連続満塁ホームランを放ったラッキーボーイ。1試合8打点は大会記録である。その勢いはとどまるところを知らず、決勝戦でもツーランを放ち、北陸勢初の甲子園優勝に大きく貢献した。井上は昨年夏の甲子園で4番打者として大活躍。決勝戦では奥川からも一発を放つなど、6試合で3本塁打、14打点をマーク。チームを初優勝に導いた。

 2020年代は果たしてどんな選手が甲子園で活躍を見せるのか。新たなスターの誕生に大いに期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月14日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。