コロナ禍だから行かずに済ませる「フランスのバスク」で食べ飲み歩きガイド

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地元のワイン、イルレギを

 そして海側のバスクも忘れちゃいけない。なんせ海の青と草木の緑をどちらも楽しめるのがバスクの最大の魅力ですから。それでもビアリッツより小さな海沿いの街がオススメかな。大昔にアメリカ大陸近くまでバスクの人は鯨を獲りに行っていたそうで、昔から海の幸を食べていただけに海側の魚介料理もいいものです。特にオススメなのが Chipiron(シピロン)という小さめのイカ。鉄板で焼いただけのシンプルなものからソテーや煮込みなどいろいろありますが、なんでも間違いなしの美味しさです。それともう1つがTxoro(チョロ)。これはブイヤベースみたいなものですが絶品。

 あとバスクってシードルの産地でもあるんですよね。この事実もあまり知られていない。ノルマンディーとかブルターニュのシードルは有名ですが、バスクのそれは知らないって人がほとんどなのでは。ただ、彼の地のシードル造りはバスクから伝わったとか。本当かね? 味わいには大きな違いがあって、甘さを感じるフランス北西部のシードルに対して、バスクのシードルって酸っぱい。飲食店で見つけたら食前酒でどうぞ。

 食後に飲むならIzarra(イザラ)というリキュール。黄色や黄緑色のラベルの、“いかにも人工的に色や風味をつけています”というものは、どこのカフェに行っても置いてあります。が、イザラでもIzarra 54(イザラ サンカント・キャトル)は別次元。これだけは100年以上前の製法で丁寧に作られていて、現代の大量生産品では表現できない素晴らしい風味です。とてもレアだけど飲むならこちらを。

 ワインに関しては地理的に近いということもあり平気でボルドーをリストに載せているような魂を感じない店も多いのですが、是非とも地元のワインであるイルレギを飲んで欲しいですね。生産量の大部分が赤でちょろっとロゼがあって白が最も少ない。それでも3タイプあるからいろいろな料理にも合わせやすい。それこそイザラの54を置いているようなレストランなら料理やワインの品揃えは間違いないと思います。

 その土地の料理とその土地のお酒を旅先で楽しむ。これ以上の悦びがあろうはずがない。バスクの旅、最高! ただ唯一の難点はレンタカーを使わないと実現しないということ。最後の最後にごめんなさいね。海側だけならビアリッツ==バイヨンヌ空港から、電車やバスを使って海側の街を順番にそれこそサン・セバスチャンへもビルバオにも行けますが、緑のバスクも満喫するなら車がいる。今ではフランスでも下から2番目くらいのクラスからオートマ車もありますから、これまで海外でレンタカーを運転したことのない方も是非チャレンジして、そして自由に自分らしく楽しんで欲しいと思っています。季節は閑散としてお店も閉まってしまう冬と3密となるヴァカンス・シーズンを避けて。となると早くても来年? 秋に行けるようなことがあればいいのですが。

幅 紀長(はば・としなが)
東京・銀座のワインバー・オーナー。「自分の人生は世界中のワインを理解できるほど長くはない」という真実に気付き、フランスワインに溺れた生活が長らく続いておりますが、フランスワイン好きにもそうでない方にも、そもそもワインはそれほどでも……という方にも、少しでも楽しみや興味を持っていただけたら幸いです。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月13日掲載

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