コロナ禍で忘れられている「若年性脳梗塞」、36歳女性の叫び
6年前に30歳で倒れる
新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中で、世間が忘れてはいけないのは、新型コロナとは無関係の重病患者らの存在だ。重病患者らは常に適正な治療や支援を求めているが、コロナ感染を恐れ、薬をもらうために病院に行ったり施設でリハビリに励んだりすることができないケースもあり、医師とのコミュニケーション不足も懸念されているという。そんな中、あまり知られていない「若年性脳梗塞」を患い左半身が不自由になった福岡市の女性(36)が、「同じ境遇の人たちの助けになれば」と、個人のSNSを使った情報発信を続け、社会に勇気を与えている。
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「リハビリは取り組む時期が早ければ早いほどいいが、コロナの影響で施設に通えず、回復のための貴重な時間を奪われている患者が数多くいると思う」。こう危惧するのは、6年前、30歳の若さで突然、脳梗塞で倒れ、左半身が不自由となった福岡市の女性だ。
女性は2014年3月、職場の懇親会に参加していた途中、前触れもなく突然に意識を失って倒れた。最初に運ばれた救急病院では、身動きが取れないにもかかわらず、血液検査のみで問題なしと判断され、医師のいわば「誤診」により帰宅させられた。その後、再び救急搬送された別の病院で脳梗塞と診断され、一命をとりとめた。
左半身が不自由になった女性がリハビリに取り組みながら、頻繁に探していたのが、「若年性脳梗塞からの回復に向けた情報」だった。ただ、書籍やインターネットを使って探し回ったが、若年性脳梗塞にならないための「予防」や「未病」に関する情報はあっても、「倒れた後、どれくらいの期間で、どのような治療・リハビリ方法があって、どうすればいいのか」という回復に向けた情報はほとんど見つからなかった。
脳梗塞は、誰もが恐ろしい病だと認識している。ただ、特に若者はもちろん、「自分が罹患する」ということまで見据えて予防に関する情報を集める人はそう多くはないだろう。そう考えると、重病については、不幸にも罹患してからの回復に向けた情報がより重要になってくるはずだ。だが、この福岡市の女性は、若年性脳梗塞について、「回復に向けて何をすべきか、一生懸命情報を探しても、私の求める情報に巡り会うことはできなかった」と振り返る。
もちろん、女性は自身の治療に携わった医師ら専門家の助言なども参考にしながら、懸命なリハビリに取り組んできた。そして、一度は「死にたい」と思うほど落ち込みながらも、周囲のサポートを受けながら精神的にも肉体的にも徐々に回復していき、趣味で始めたウィンドサーフィンのおかげで、前向きになることもできた。それでも、「若年性脳梗塞からの回復に向けた情報が少ない状況に変わりはない」との危機感は拭うことができなかった。
そこで女性は数年前から、「今もどこかで私と同じように情報を探す人がいるのではないか」「この体験を伝えることで同じ境遇の人の不安を少しでも拭えないか」との思いを強め、昨夏から自身の体験をインターネット上に残す活動を始めた。突然に半身不随となってからの生活、3か月ほどで退院して自宅に戻って感じたこと、ウィンドサーフィンを始めて心身共に向上していったこと等々、脳梗塞で倒れてから回復していった経緯や様々な思いを「ゆるり」のペンネームでLINEノベルに約8万字で書き上げ、個人のSNSで発信している。
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