「山口百恵」ついにサブスク解禁! 作曲家・都倉俊一が振り返る「マイベスト3曲」

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 引退から40年。このほど、山口百恵(61)の楽曲のサブスク配信が始まった。

 わずか7年半で芸能界を去った山口の作品で配信されるのは、主にシングル全曲とアルバム22作。楽曲の総数は600以上に達するが、うち100曲あまりを提供した作曲家の都倉俊一氏(71)に“マイベスト”の3曲と思い出を聞いた。

「当初は歌唱力がいまひとつで、レコーディングを中断させたこともしばしば。その度に百恵は“先生、すみません”って何度も頭を下げてきてね。でも、一度も涙を見せたことはない。14歳にもかかわらず、プロ意識と芯の強さはすでに、ひとかどの芸能人でしたね」

 最初に挙げたのはデビュー曲の「としごろ」だ。あまり聞き慣れない曲だが、

「オリコンは37位。僕らが期待したほどヒットはしなかったんだよね」

 実は、曲と山口のイメージとの間にギャップを感じていたとか。

「『花の中三トリオ』と呼ばれた森昌子と桜田淳子は明るく健康的でしたが、百恵にはどこか影がつきまとう印象がありました。だから、明るい曲調に我ながら“これは違うなあ”と違和感を覚えていたんです」

 お次は2曲目にリリースされた「青い果実」だ。

「前作の反省を踏まえて曲をガラリとマイナー調に変え、歌詞も〈あなたが望むなら/私何をされてもいいわ〉とやや煽情的な内容になりました。ところが彼女が歌うと全然いやらしさを感じさせない。これで“百恵にしか歌えない曲がある”との確信を得ることができました」

 最後は、デビューから2年目にして紅白初出場をもたらした「ひと夏の経験」。

「作詞担当の千家(和也)が“思い切って書いてみたんだけど、どうかな?”と持ってきたのが、〈あなたに女の子の一番/大切なものをあげるわ〉という歌詞。賛否はありましたが、百恵のイメージを決定づける記念碑的作品になりました」

 少しずつ歌も上手くなってね……と語る都倉氏は、

「僕らの作った世界に百恵が入って来たんじゃない。百恵の世界に僕らが入って曲作りをしたんですよ」

 と、感慨深げに振り返るのだった。

週刊新潮 2020年6月11日号掲載

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