巨人、「オープン戦最下位」からリーグ優勝は至難の業、計算できるのは菅野だけ…

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 昨季のセ・リーグ覇者、巨人に厳しい状況に落ち込まれている。新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで行われたオープン戦は、16試合で2勝10敗4分、勝率.167で屈辱の最下位に沈んだ。その終盤は特に酷く、2月24日の広島戦から13試合勝ち星なしの9連敗を喫するなど、“低空飛行”のままオープン戦を終えている。「たかがオープン戦」だが、「されどオープン戦」。果たして、今年の巨人は、大丈夫なのだろうか。

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 データで見るとこうした不安が増幅する。過去10年、オープン戦の最下位チームとレギュラーシーズンの順位は以下の通りになっている。

2010年:横浜→6位(OP戦4勝9敗2分、勝率.308)
2011年:横浜→6位(OP戦2勝7敗、勝率.222)
2012年:阪神→5位(OP戦5勝10敗2分、勝率.300)
2013年:中日→4位(OP戦4勝14敗2分、勝率.222)
2014年:ヤクルト→6位(OP戦1勝11敗1分、勝率.083)
2015年:広島→4位(OP戦3勝7敗2分、勝率.300)
2016年:中日→6位(OP戦4勝9敗3分、勝率.308)
2017年:巨人→4位(OP戦5勝14敗、勝率.263)
2018年:阪神→6位(OP戦2勝12敗2分、勝率.143)
2019年:日本ハム→5位(OP戦3勝7敗3分、勝率.300)

 このように、すべてがBクラスで、そのうち半数が最下位という結果が残っている。あくまで調整段階であり、今年でいえば、新型コロナウイルスの影響で「無観客」という特別な環境下でのプレーを強いられたため一概に比較はできないが、そのオープン戦からの勝率の低さは、やはり気がかりなところだ。

 無論、内容的にも不安だらけである。最大の懸念は山口俊が抜けた先発投手陣。その第一の解決策としては、期待の新戦力として昨季韓国17勝のサンチェスの名前が挙がるが、オープン戦では3試合で0勝1敗、計7回2/3イニングを投げて11失点(自責点9)の防御率10.57という散々な成績に終わっている。

「既存戦力の底上げにも期待したいが、思うように進んでいない。昨季、自己最多の8勝を挙げた桜井俊貴がオープン戦3試合で防御率9.28、高卒2年目の戸郷翔征もソフトバンク打線に4回途中10失点と炎上して防御率9.35と精彩を欠いている。畠世周と大竹寛は、ともに右肩周辺の肉離れで出遅れているほか、先発再転向の田口麗斗も3月15日の楽天戦で5回途中6失点と打ち込まれて防御率5.27とアピールし切れなかった。幸い、肘の違和感で離脱していたメルセデスが実戦復帰を果たしたほか、サイドスロー転向に活路を見出している鍬原拓也がオープン戦で活躍して覚醒の予感もある。ここに2年目左腕の高橋優貴を加えた面々が候補となるが、皮算用の部分が多く、信頼できるのがエースの菅野智之、ただ一人という状況はキャンプイン時点から変わっていない」(巨人を取材するスポーツライター)

 一方、「強力」とされる打線も万全ではない。4番の岡本和真は15試合で打率.356、3本塁打、10打点と成長ぶりをアピールしたが、大城卓三や重信慎之介、田中俊太、若林晃弘、北村拓己、山下航汰といった中堅、若手はアピール不足。春季キャンプMVPだったモタが話題を集めたが、支配下登録後に技術面の拙さが露呈し、オープン戦22打席連続無安打で2軍降格。原辰徳監督は新外国人のパーラに期待を寄せるが、オープン戦では11試合で打率.233、0本塁打、3打点とパッとしなかった。

「パーラはある程度の打率は残せるかもしれませんが、見た限りはホームランバッターではない。構想では5番打者ですが、長打がなければそこまで怖さを感じないです。パーラ の加入でどこまで得点力が上がるのかは疑問ですね」(球団関係者)

 そんななか、昨季のリベンジに燃える移籍2年目の中島宏之がオープン戦で打率.351、4本塁打、6打点と気を吐いたが、7月に38歳となるベテランにシーズンを通して多くのことを望むのはナンセンスだろう。

 もちろんシーズンは始まっておらず、諦めるのは早い。思い出されるのは、第二次原監督体制、3年目となる2008年だ。この年もオープン戦で12球団中最下位(2勝10敗3分、勝率.167)に沈んだ。レギュラーシーズンに入っても調子が出ず、球団初となる開幕5連敗を喫するなど苦戦を強いられ、首位・阪神と最大13ゲーム差に広がった。しかし、夏に行われた北京五輪を境に阪神が失速すると、巨人が猛追して逆転優勝を果たす。この大逆転劇は「メークレジェンド」と呼ばれた。

 その時のメンバーを見ると、先発投手陣はグライシンガーが17勝、内海哲也が12勝を挙げた以外は、高橋尚成が8勝で、上原浩治と木佐貫洋が6勝止まりだったが、不足分を山口鉄也などのリリーフの奮闘でカバー。そして打線は、小笠原道大とラミレスの3、4番が絶大な存在感を見せ、その後を打つ5番も高橋由伸や阿部慎之助などが座り、強力打線を作り上げた。

 しかしながら、当時の戦力に比べて、今年の戦力はかなり見劣りしてしまう。オープン戦最下位から優勝は絶望的とも言えなくもない。

 ただ、さる球団OBは言う。

「優勝した去年も順風満帆だった訳ではない。原監督は選手をやり繰りするのが上手いし、シーズン途中までなんとか凌いで、最後は自身の“勝ち運”で逃げ切るのが優勝パターン。オープン戦で勝てなくても、シーズン開幕となれば気持ちも切り替わるでしょう」

 新型コロナ禍での「開幕延期」は、チームを再整備する猶予が与えられたことも意味する。これまで経験したことのない問題に直面し、これまでと違う戦いを迫られた2020年において、原巨人が本来の「球界の盟主」としての強さを見せられるか。

週刊新潮WEB取材班

2020年6月11日掲載

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