「日本は中国批判声明に参加拒否」報道の波紋 安倍政権が“弱腰”なのは紛れもない事実

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イタリアも中国を批判

 それでは共同通信の報道に対する、ネット上の代表的な反応をご紹介しよう。日本政府の対中姿勢に異議を申し立てるものが圧倒的に多い。まずはツイッターからだ。

《このニュースを聞いたときほど日本人であることを恥ずかしいと思ったことはないね。日本政府は、日本国民の顔に泥を塗った》

《何を考えているのか『日本政府』 連日、尖閣列島に「機関銃のようなものを搭載した船」で領海侵犯している中国を【非難しない】なんてありえない! 安倍首相、何を考えているのですか?》
(註:改行を省略し、空白を追加した、以下同)

 YAHOO!ニュースはトピックスに共同通信の記事を掲載した。読者が投稿したコメント2件を引用させていただく。

《国民の民意も反映せずに勝手に拒否すんなよ。世論調査とかしてみろ。最近の中国の尖閣での動きはこのためだったのか? はっきりいて早く中国から工場撤退させた方がいいと思う》

《これは政府の考えが間違っていると思う。習近平国家主席の来賓などほとんどの国民は望んでおりませんので、実現しようとごり押しするなら安倍政権は終わります。直ちに欧米に歩調を合わせて香港の民主化を支持すべきです》
(註:句読点を補った)

 共同通信の記事や、それによって生まれたネット世論を、専門家はどのように見ているのだろうか。

 毎日新聞外信部副部長を務め、現在は産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授を務める古森義久氏は、国際情勢に精通したジャーナリストだ。その古森氏に共同通信の記事について感想を訊いた。

「何より重要なのは、共同通信1社だけの記事を元に分析するのは危険だということです。それを大前提として、あくまでも一般論を申し上げれば、これまで日本政府が中国に対して及び腰だったことは事実だと言えるでしょう」

 古森氏は、新型コロナウイルスの問題を具体例として挙げる。「欧米諸国は中国に感染拡大の責任を強く問うていますが、日本政府は消極的であると言わざるを得ません」と指摘する。

「その急先鋒がドナルド・トランプ大統領(73)ですが、例えばイタリアでも中国の責任を追及する動きが見られます。マッテオ・サルヴィーニ前副首相(47)は『もし中国政府がコロナウイルスの感染について早くから知っていて、あえてそのことを公に知らせなかったとすれば、全人類に対する罪を犯したことになる』、『中国は新型コロナウイルスのパンデミックを隠蔽することによって全人類への罪を犯した』などと議会で何度も糾弾し、発言は欧米メディアでも大きく報じられています」

 イギリスの対中姿勢が変化したことは、複数の大手メディアが――小さな記事ではあるが――報じてはいる。

「対中関係見直し拍車=『一国二制度』懸念-旧宗主国の英」(時事通信5月28日)、「香港巡り、英で対中強硬論 290万人、英市民権獲得に道」(朝日新聞6月4日)という具合だ。

「イギリスのドミニク・ラーブ外相(46)は感染拡大の原因について、国際的な徹底調査を求めました。そして、もし新型コロナの感染拡大が収束したとしても『以前と同じ二国間関係に戻ることができないのは間違いない』と中国を突き放す発言もしています。インドでも中国と国境紛争が起きていることも加わり、弁護士グループが中国への賠償請求を模索するなど、中国の責任を問う動きが活発化しているのです」(同・古森氏)

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