12球団で最も優勝から遠ざかるオリックス「復活」なるか 試合数減少でチャンスあり

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 コロナ禍で開幕延期を余儀なくされていたプロ野球2020シーズンもようやく6月19日の開幕が正式に決定。ファンにとっては嬉しい限りだ。いずれにしても交流戦の中止がすでに決定している今シーズンは試合数が大幅に少なくなるイレギュラーな状況のもと、優勝が争われることになる。そんな中、注目を集めているのが現在12球団で最も優勝から遠ざかっているオリックス・バファローズの動向だ。

 オリックスが最後に優勝したのはまだブルーウェーブを名乗っていた96年。前年に起こった阪神・淡路大震災からの復興を願い「がんばろうKOBE」を合言葉に仰木彬監督のもと、メジャー入りする前の若きイチローがいずれも3年連続となるMVP、首位打者、最高出塁率、最多安打をマークするなど大活躍。前年に続いてのパ・リーグ制覇を果たし、日本シリーズではメークドラマを演じた巨人を4勝1敗で破り、19年ぶりの日本一となった年だ。チームやファン、神戸市民が1つとなった盛り上がりを覚えている人も多いことだろう。

 しかし、以来24年間チームは低迷、2000年以降は08年、14年に2位になった以外は全てBクラス。昨シーズンも交流戦は2位と意地を見せたものの、優勝した西武とは16ゲーム、5位千葉ロッテとは3ゲーム差の最下位に甘んじている。

 そんなオリックスだが、昨シーズンは入団3年目の山本由伸が防御率1.95で最優秀防御率、同じく3年目の山岡泰輔が13勝4敗、勝率.765で最高勝率のタイトルを獲得。また、野手では4年目の吉田正尚が打率2位の.322、29本塁打でシーズンを通して、打線の中心となってチームを引っ張るなど若い力の台頭が見られた。

 それだけに今年のオリックスに期待するファンも多いが、はたして久しぶりの優勝にまで手が届くのか、日本ハム、ダイエーなどで活躍、引退後はWBCで日本チームのピッチングコーチを務めた野球評論家の武田一浩氏に聞いてみた。

「うーん、そうだね、優勝まではどうかなあ。正直なところちょっと難しいかもしれないね。たしかに選手が揃ってきたから僕もここ数年、オリックスには注目してきた。優勝を予想した年もあったくらいだから。でも、金子(弌大)が北海道日本ハムへ、西(勇輝)が阪神へとチームの顔がFAでいなくなったり、期待していた選手がケガや不調で思うような活躍ができなかったりして戦力がなかなか整わなかった。その意味でいえば、今シーズンは若い選手がさらに育って力をつけてきたし、現役バリバリのメジャーリーガーであるアダム・ジョーンズが入ってきたりして、戦力は確実にアップした。特にジョーンズはホントにいい選手だね。まだ若いし、日本に来るとは思ってもいなかった。彼が頑張ってメジャーで見せた力を発揮すれば吉田がさらに生きることになるから、チームとしてオリックスが面白い存在になることは間違いないだろうね。ただ、優勝するためにはピッチャーが足りないな。去年タイトルを獲った山本、山岡が昨シーズン同様の活躍をしてくれるとして、ある程度はローテーションを任せられるピッチャーが最低でもあと2人はいないとやっぱり苦しいと思う」

 今年のパ・リーグを戦力面から判断すると、ソフトバンクと埼玉西武が頭1つ抜け出し、それを追いかけるのが千葉ロッテと東北楽天、4球団に比べてオリックスと北海道日本ハムは少々力不足というのが大方の見方だ。武田氏も同様の見解だ、しかし、冒頭にも述べたように今シーズンは試合数が120試合前後と例年よりも少なくなる。そこに十分波乱の余地はあるのではないかと武田氏は見ている。

「これはオリックスに限らずどのチームにもいえることだけど、今シーズンは例年に比べて試合数が少ないだけに開幕ダッシュできるかどうかが優勝への大きなポイントになるんじゃないかな。もし開幕でつまづくと、そのまま浮き上がれずに終わってしまうことも大いにあり得ることだからね。それを考えるとオリックスは若い選手が多いだけに勢いがあるから、たしかに低いとはいえ開幕ダッシュができれば優勝の可能性も出てくると思う。ただ、オリックスに関していえば、長い間優勝から遠ざかっていて勝ち慣れていないことが気になるね。ずっと勝っていないとどうしてもそうなってしまうんだけど、相手と競った時にダメだと思って諦めちゃうんだ。そういうチームでは絶対に優勝できない。オリックスはそこを変えていかないといけないだろうね」

 野球ファンが開幕を待ちに待った今年のペナントレースが間もなく始まる。オリックスが「台風の目」になればシーズンは間違いなく盛り上がることだろう。オリックスの奮起に大いに期待したいものだ。

清水一利(しみず・かずとし)
1955年生まれ。フリーライター。PR会社勤務を経て、編集プロダクションを主宰。著書に「『東北のハワイ』は、なぜV字回復したのか スパリゾートハワイアンズの奇跡」(集英社新書)「SOS!500人を救え!~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月10日掲載

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