「コロナ給付金」200万円は欲しいけど課税はイヤ…お坊さんたちの銭闘

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200万円もらっても焼け石に水

 現在、政府が新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、前年より一定程度収入が減少した中小企業などに最大200万円を支給している「持続化給付金」制度。しかし、政治団体、性風俗産業、そして宗教団体は、この持続化給付金を申請できないルールになっているのだが……。

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「宗教法人支援めぐり紛糾 自民」
「宗教法人への支援を一時検討 2次補正予算案、違憲疑いで除外」
「宗教法人の支援、与党で調整へ 2次補正巡り」

 そんな見出しの記事を新聞各紙が報じたのは、5月27~28日にかけてのことだった。
冒頭に記したように、宗教団体が持続化給付金を申請できないルールについて、自民党が「宗教法人にも支給したほうがいいのでは」という議論を始めたものの、総務会で紛糾、見送りになったというのが上記のニュースの主旨だ。

 日本国憲法は第89条で、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、(略)これを支出し、又はその利用に供してはならない」と定めている。この条文を素直に受け取れば、政府が宗教法人に持続化給付金を支給するのは憲法違反になりかねない。自民党もその懸念があって、宗教法人への給付金支給を見送った。
 宗教界ではさぞがっかりする声が多かろう……しかし、意外にも「(給付金支給の)見送りは当たり前だ」との意見も目立つのだ。

 現在、多くの宗教法人は民間企業と同様、コロナ禍のなかで収入減に見舞われている。葬儀の規模は縮小し、法要や祭は中止に追い込まれ、観光寺院に足を運ぶ人々も激減した。「収入は前年同月比で8割減」「春以降、ほぼ収入が途絶えた」といった話をする僧侶や神主たちも珍しくないのだが、しかしそれでも現場の宗教者たちからは、以下のような声が聞こえてくる。

「政教分離は大切な考え方で、憲法を踏み越えてまでお寺が給付金を求めるのは筋違い」(60代僧侶)
「日ごろ税制優遇を受けている宗教法人が、『困っているから税金で助けてください』では世間からの批判を免れない」(70代神主)
「こういうとき何かを『求める』のではなく、いかに人々や社会を助けるのかを考えるのが宗教者ではないでしょうか」(50代牧師)

 聞こえてくるのは「正論」だけではない。

「確かに春以降、観光客が激減。拝観停止にも追い込まれ経営は苦しいが、うちの年間運営経費は億単位で、200万円もらっても何にもならない」(京都のある観光寺院関係者)

 さらにはこんな意見まで。

「持続化給付金を申請するには、実際に収入が減っていることを証明するために役所へ会計帳簿などを提出しなければならないんです。でも、お寺や神社の多くはそもそも税金を払っておらず、そうした資料を行政に提出してこなかった。今回の持続化給付金申請をきっかけに全国の宗教法人の経営状態が国に把握され、宗教課税論推進の材料にされる可能性さえあった」(70代僧侶)

 特に反対が多かったのは京都の寺院。かつて実施され、大変な物議を醸した「古都保存協力税」騒動のトラウマがあったのだろう。

 また現在、年収8000万円以下で、駐車場経営や飲食物販売など宗教活動とは関係ない収益事業を手がけていない宗教法人は、収支計算書を作成する義務が法律上なく、
「小規模な神社仏閣では会計帳簿が存在しないところが多く、私自身、つくっていません。宗教法人に持続化給付金が出ることになっても、申請書類を用意できるところは、かなり少ないのではないでしょうか」(前出の70代神主)

 といった事情も存在するのである。

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