テラスハウスが残したもの…欲望に火をつけSNSのヘイトを取り込んだ先で
モンスター化した視聴者
“もっと、もっと”を求める視聴者は面白ければ絶賛するし、つまらなければ平気で否定する。自分自身は傷つかないし痛くも痒くもないし、とにかく楽しみたいというように視聴者がモンスター化していったと見る。
「盛り上がりに欠けた回について、SNSに“くだらない映像の繋ぎ合わせでしかなかった”などといった書き込みがあれば、それを気にしない作り手はいない。 “アイツとコイツは今後こうなる、こうなってほしい、こうなってほしくない”などと、熱く語られていて、そういう視聴者の思いに出演者や作り手側も引きずられていったことは否定できないでしょう。キスシーンで言えば、その後の軽井沢編であった聖南とノアのハード目なキスシーンなんかは、その結果かなと思われますし……」
直近のシリーズでは、亡くなった木村花さんのみならず他の出演者に対しても容赦ないSNS上でのヘイト攻撃が繰り返されていた。
「ミュージシャンのケニーやプロバスケットボール選手の凌は、“どうせステルス・マーケティングでしょ”という指摘がすごかったし、スタジオ出演者の山里亮太さんもその手のツッコミを繰り返していましたよね。ただ、この点に関しては、本当のド素人がテラスハウスに入ってきても面白くないでしょう、そんなの見たいですか?という意見も結構ありました。いわゆる業界に絡んでいるとかクリエイティブな仕事に従事している人が出ているから面白いんじゃないのかなってことですよね」
「それはともかく、SNSでの攻撃に話を戻すと、2019年8月から参加した桜美林大学4年の愛華がヒドい書かれ方に涙したり、これまでの自身の行動を説明するようになったりして、中(出演者)が外(SNS)を意識する場面がどんどん入ってきます。19年4月から参加したイラストレーターの香織が自分に許嫁がいたことを俳優の翔平にツッコまれて否定するシーンもまさにそうですね」
もっとも、SNS上における攻撃は今に始まったわけではなく、
「たとえば軽井沢編での長野大4年の優衣へのヘイトも相当なものでした。出演する以上はそういう風聞は避けられない。避けられないのであれば、それを番組に取り込んでいくことで、視聴者との繋がりをより深めることができるかもしれないという考えがあったのかもしれません。エロとバイオレンスは人間の根源的な欲求ですよね。それがSNS上のヘイトで増幅され、暴走していったことは間違いありません」
いつの時代も変わらない視聴者の欲求がベースにあり、SNSは時代と共に形を変えて生き残っていくのだとしたら、似たような番組がまた生まれるのかもしれない。
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