スウェーデンの“ゆるい”コロナ対策 現地の日本人が証言する異色の戦略の実態

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“集団免疫”の獲得

 こうしたスウェーデンの政策について、ノーベル財団のヘルディン会長ら2千人超の研究者は3月末、〈集団免疫の獲得を待つ戦略は科学的根拠に乏しい〉と猛烈に批判し、厳格な措置を講じるよう求めた。

 同じく“集団免疫”の獲得を目指したイギリスはわずか数日で撤回し、ロックダウンに踏み切っている。

 だが、スウェーデンのステファン・ロベーン首相は、

「私たちは個人として責任を負わなければならない。全てを立法化して禁止することはできない。常識の問題だ。大人である私たちは、まさに大人として行動する必要がある」

 とブレない姿勢だ。

 サッカーリーグも6月中旬に開幕予定。このリーグで活躍する安岡拓斗選手は、

「ウインタースポーツ以外ではサッカー人気が圧倒的なので、ファンの後押しもあって早い決断となった印象です。現状では、スタジアムに観客を入れる方向で話が進んでいます。自己責任を重視するお国柄なので、観戦するにしても感染リスクは承知してください、という感じですね」

 他方、漫画で現地の日常を描くYukaさんは実際にコロナに罹っている。

「ストックホルムの自治体は、コロナの症状が出た際に病院へ行くべきかを判定するサイトを開設しています。その結果を参考に、私は2週間の自宅療養を選びました。後になって抗体検査で陽性と出て、罹患していたことが分かったのです」

 スウェーデンの致死率は日本の倍以上。不安はなかったのだろうか。

「致死率の高さは高齢者施設でのクラスターが原因と発表され、私も納得していましたからね。生活もさほど変わらないからか、警察が4月に発表したデータによれば、コロナとDVの増減に大きな相関性は見られないそうです」(同)

 浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫氏はこう話す。

「コロナ対策で最も重要なのは、新型コロナウイルスによる死亡者と、経済難による死亡者の総数を少なくすること。スウェーデンの死亡者数はいまがピークで、しかも、集団免疫を獲得しつつあります。そう考えると、いまから3年後には、経済を止めなかったスウェーデンが“成功例”になっているかもしれません」

 しかも、現時点でもロックダウンしたベルギーやフランス、これに加わったイギリスより致死率は低い。

 コロナ克服のカギは、規制や自粛ではなく、“大人の対応”かもしれない。

週刊新潮 2020年6月4日号掲載

特集「『コロナ』闇の奥」より

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