吉村知事と小池知事、“改革の経験”と“ビジョン”に差 経済に配慮なき都のロードマップ
なんら改革をしていない
「東京都のロードマップを見ると、ナイトクラブやカラオケ、ジムが最後のステップまで×ですが、そういう業種は消えてしまうのではないか、大丈夫なのかな、と思ってしまいます。いつまでも開けられないと、アンダーグラウンド化する可能性もありますよね」
と首を傾げるのは、神奈川県の黒岩祐治知事だ。神奈川では、そういう業種の営業も認められるわけだが、
「同じ業種でも、感染症対策をよくやっているところと、やっていないところがあると気づき、業種ごとの休業要請で本当にいいのか、という考えに至ったのです。感染拡大防止と経済を両立させるには、業種ではなく“感染拡大防止策をきちんとやっているか”が基準になると思い、業種ごとに感染拡大防止ガイドラインを作成しました。事業者の方々はそれをチェックし、県作成の“感染防止対策取組書”を貼り、お客さんにアピールしてほしい。県民のみなさんには、それを見てお店を選んでいただく。そういう流れを作りたいのです。街の声を聞いても、みなさんウイルスの怖さを痛感しておられる。それなら外出自粛や休業の要請が解除されても、ワッと元通りになることはないだろうと。県民のみなさんを信じているということですね」
黒岩知事自らが、経済のためにもリスクをとっているということだが、小池知事はリスクを嫌う。それは大阪府の吉村洋文知事とくらべても明らかで、
「大阪は緊急事態宣言が解除される前から、自分たちが作った基準をクリアできれば、自分たちの判断で自粛を解除し、責任は自分たちでとる、としてきました。一方、東京はあくまで“国が言ったから”と、国の責任にする姿勢です」
とは前都知事の舛添要一氏の弁。元東京都知事で、現在、大阪府・大阪市の特別顧問を務める作家の猪瀬直樹氏も言う。
「吉村知事は壁にぶつかりながら、大阪都構想という、二重行政の無駄をなくす改革を進めてきた経験がありますが、小池知事はこれまでなんら改革をしていない。満員電車解消や花粉症ゼロなどは掲げても、なにも解消されていません。それが二人の差でしょう。改革を進めようとすれば、霞が関やマスコミほかと戦うことになり、反対派や世論を納得させるには、明快なアジェンダやロードマップを作り、ファクトとロジック、透明性で問題点をクリアにする、というステップを踏むことになる。そういう渦中にいれば、人々に必要な政策や情報の適切な伝え方が自然とわかるはずです。吉村知事は、たまたまコロナ対策で成功しているのではなく、経験があるから適切に対応できているんです」
さらに、こう続ける。
「知事として改革をするとは、“この自治体をこうしたい”というビジョンがあるということ。都構想を通じてよりよい大阪にしたい、それには、コロナで打撃を受けた経済を早く立て直す必要があり、多少のリスクをとってでも、なるべく早く経済を回して出口戦略を練る――。吉村知事は、そういう当たり前のことをしているだけです。一方、小池知事には“東京都をこうしたい”という目標がないから、改革もしないし、リスクもとらないということではないでしょうか」
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