阪神・藤浪晋太郎は“アスリート”ではなく土と芝のにおいのする“野球選手”
投手だけは孤独な仕事
生まれてこのかたというよりはむしろ、母のお腹の中にいたころから父・和夫の絶叫を聞いてきたに違いない徳光正行もまた大のプロ野球ファンだ。3カ月遅れの公式戦開幕に心躍らせる中で飛び込んできた阪神タイガースの藤浪晋太郎投手への無期限2軍降格処分。これを切り口に、野球選手のロマンについて綴る。
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プロレスファンでアイドルファン、若い世代の方から見ますと昭和遺産のような私でありますが、当然のようにプロ野球ファンでもあります。幼き頃から父・和夫の薫陶よろしく「闘魂込めて」を子守唄代わりに聞いて育ちその甲斐あってか、熱心な巨人ファンでございます。
晩年の原辰徳選手への冷たい扱いや清原和博選手獲得のために落合博満選手を放出したこと、そして三顧の礼で迎えた小笠原道大選手への戦力外通告……。ファンとして巨人軍や巨人フロントに何度も裏切られ憤怒したことはありますが、結局のところ初恋の相手を心底嫌いになれることはなく、また喉元過ぎれば、また巨人軍への愛は復活してしまい、「あんたが好きなんやー」状態に陥り、さらにその愛は増大してしまう次第であります。
ただ、冒頭でも述べましたとおり、巨人ファンであると同時にプロ野球全体のファンでもありまして、プロ野球界隈で起こる出来事全てが気になって仕方がなく、その度に一喜一憂してしまうきらいがございます。
さて本題に入りましょう。6月19日に公式戦開幕が決まり、選手も関係者の皆さんも一安心となったことでしょう。そして私を含めファンの皆様も期待をし、無観客とはいえ、真剣勝負をテレビはじめ各媒体で観戦することによって、喜びと感動と落胆を味わう機会を頂くこととなりました。そんな中で、
《藤浪晋太郎投手、練習に遅刻で無期限2軍降格》というニュースが飛び込んできました。
「遅刻したくらいでニュースになるなんてスター選手の証だな」とも思いましたが、前回の件(友人宅でのパーティ参加による新型コロナウイルス感染)があったので、世間というかファンの皆様の心象もかなり悪いものになっているでしょう。団体の長として優勝を目指し統率を図る矢野監督が下した決断は全面的に正しいと思いますし、当たり前のことだとも思います。
「お前はいい年して企業に勤めたことがなく、常識が欠落していからそんなこと言えるんだ」なんてお叱りを受けそうですが、「プロなんだから結果がすべてであって練習に遅れたくらい、懲罰ランニングで事足りるのでは」と思ってしまう自分がおります。重ね重ね、矢野監督が「これが初めてじゃないんで」とおっしゃり、相当腹に据えかねているのも承知しています。野球は1人でやるものではありませんし、9人そしてベンチも一体となって勝利を目指すスポーツです。
ただ、長年観戦をしておりますと、投手だけは孤独な仕事だなとも思ってしまうのです。捕手のサインも大切ですが、投手が球を投げなければ、競技そのものが始まらないし成立しない。そして、ひとたびマウンドに上がれば、誰が助けてくれるわけでもない。そういったことを考えますと、少々オラオラ系というか自分勝手な殿様体質の人間の方が向いているのではとも感じるわけでございます。
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