加藤厚労相は困惑「都知事選」の100倍面白い「日本医師会」会長選“なんでこんな時に”感
3時に寝て6時過ぎには起きている
コロナ禍なのになんでまたというのが国民の偽らざる心境ではないだろうか。開業医や病院の勤務医ら約17万人でつくる学術専門団体「日本医師会(日医)」で選挙が行われることになった。現職の横倉義武(75)の続投が確定的だった中で、“クーデター”らしき動きが出てきた結果、「横倉引退」の流れかと思われたが……。砂をかむように味気ない都知事選より100倍面白い「日本医師会」選挙の実態とは。
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日医の設立は1916年で、初代会長は細菌学の北里柴三郎博士。現職の横倉義武氏は19代目だ。
日医の会長といえば“ケンカ太郎”の異名を取った武見太郎が著名で、開業医の収入につながる診療報酬の引き上げを巡って「全国一斉休診」をするなど、国とガチンコで対峙していた時代もある。
一方、九州・福岡出身の現職・横倉氏は政官財とのパイプを生かして実績を作ってきた人物だ。
「2012年から4期8年に亘って日医の会長を務めてきました。九州で安倍晋三首相や古賀誠元自民党幹事長の後援会長をやったりした関係で政治とは近く、2017年には日本人で3人目となる世界医師会の会長に選ばれています」
と、日医の関係者。
文字通り世界を股にかける日々の中で、折からのコロナ禍。医療崩壊の瀬戸際に立たされた現場からの声を受け、4月1日に「医療危機的状況宣言」を発表し、緊急事態宣言を発令する政府の背中を押した格好となった。宣言が全都道府県で解除された後の毎日新聞のインタビューでは、こんな風に紹介されている。
《安倍晋三首相や政府の専門家会議のコロナ対応を巡っては、そろそろ検証の動きが出てきそうだ。「ぎりぎり及第点ですね。不幸にして亡くなられた方は、他の先進国に比べても格段に少ないですし、医療崩壊のような事態は起きていないので、落第点ではない」。そう評価したうえで、横倉さんは反省点も挙げた。「海外からの入国制限や、緊急事態宣言の発令をもう少し早くした方が良かった」》
《先月末の記者会見で「私の意見としては、有効なワクチンが開発されないとオリンピック開催は難しいのではないか」と述べ、波紋を広げた。「私の発言は反響が大きくて」と苦笑いするが、悲観的な発言の裏には「オリンピックは国民皆の楽しみ。明るい夢は常に持っておかないと」との思いがあるようだ》
コロナ禍が、病院経営に深刻な影響を与える現状についても言及し、
《横倉さんは18日、安倍首相と会談し、医療機関などへの約7兆円の支援を要望した。「閉鎖されるところがないように、政府にいろいろお願いしています」》
「政治とはもちろん近いですが、なれ合うわけではなく言うべきことは伝えるというのが横倉さんのポリシーですね。とにかく働き者で、色んな人と会って話す。受刑者からの手紙にだって返事するようなタイプで分け隔てもない。横倉さん以前は会長の定宿は帝国ホテルだったんですが、彼になってからビジネスホテルのレベルに下げた。そのあたりは頓着しないタイプです。また、このコロナ禍ではスケジュールがホントに分刻みで、朝3時ごろに寝て6時過ぎには必ず起きている、そんな日々が続いていました」(先の関係者)
75歳と高齢である。「確かにコロナ禍での疲労感は顔に出ていましたね」
そんななかで近づく会長の任期満了。一部を除いて誰もが会長続投を疑わなかったのだが、
「5月半ばごろでしたかね、横倉さんはクーデターの動きがあることを知らされたんです」
とは、別の日医関係者。
「現在副会長の職にある中川俊男さんが会長の座を狙っていて、その周辺が票を固めてしまっているというのです。もともと、『次の2年』のための執行部について横倉さんなりに青写真を描いていた。その執行部のメンバーに中川さんが入っていなかったようで、不満に思った中川さんが立ち上がったと聞いています。なんでも全体の票の6割くらいは押さえたとも……。横倉さんはもちろん驚いたワケですが、自分が退けば選挙はなくなる、選挙は回避したいという思いから、“禅譲する”意思を内々に打ち明けたようです」
その結果、一部のメディアが、「横倉引退」を報じたのだった。
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