好評だったNスペ「未解決事件 JFK暗殺」 専門家は「事実誤認が多い」と苦言

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書籍として市販されている書類を“機密文書”と紹介?

 番組は調査委員会の結論とは違って、単独犯説に異議を唱えた。つまり、奥菜氏のスタンスとは対立することになる。

 もっとも、奥菜氏は「番組は事実誤認と誇張が多く、対立という以前の問題です。率直に言って、とんでもない番組でした」と呆れるのだ。

 例えば初歩的な“ミス”が、番組の冒頭からあったという。放送開始から約8分が経過した場面だ。

 テキサス州ダラスの教科書倉庫ビル6階の窓から、ケネディが射殺される場面がドラマで再現される。その後、ビル2階で単独犯とされたリー・ハーヴェイ・オズワルド(1939~1963)が警察官の尋問を受ける場面になった。

 警察官はオズワルドが倉庫ビルの従業員であることを確認すると、その場を立ち去る。するとナレーションが以下のように説明した。

《教科書倉庫ビルの従業員で、事件前後に目撃されていたオズワルド。ただ、彼を犯人だと断定できる証言は1つもなかった》

 ところが、この「証言は1つもない」という表現は、事実と異なるという。奥菜氏が指摘する。

「実際はハワード・ブレナンという地元のボイラー技士が狙撃者を目撃し、オズワルドだと認めています。『ウォーレン報告書』で、ブレナンの証言は2ページ弱の分量で紹介されています。しかし番組は全く言及しませんでした。その次に記載されているのは、倉庫ビルの6階から銃身が突きだされているのを目撃した男性の証言なのですが、こちらは番組冒頭の7分35秒ごろに紹介されています。これでは資料の取捨選択が恣意的だと批判されても仕方ないでしょう」

 この後、番組はオズワルドとCIAの関係を深掘りしていく。ドラマ部分が一段落した後の45分ごろ、2019年に共同で暗殺事件の調査を続けてきた“専門家”66人が示した“新たな見解”という文書が紹介される。

 ナレーションは、この文書は暗殺事件について《国家の安全保障機関のメンバーが実行したことを強く示唆している》、《CIAなどの国家組織の関与を明言した》と解説する。

 間髪入れず、ナレーションは《大統領直轄の組織が、自らの主に牙を剥くことなど本当にあるのか》と自問自答するが、すぐに《ところが今回、CIAの裏切りを示す証拠を入手した》と宣言するのだ。

 画面に映し出されたのは「IGレポート」の一部。この文書についてナレーションは「通常は表に出ることのない、内部のやり取りを示したものだ」と説明する。

 きっと視聴者の全員が「NHKが極秘文書を独自に入手したのだな」と受け止めただろう。しかしながら、これは誇張だという。

「このレポートは1967年に作成されましたが、既に公文書として公開されており、1996年に『CIA Targets Fidel: The Secret Assassination Report』というタイトルで読みやすく打ち直して商業出版もされました。自分も20年以上前に買ったのですぐわかりました。日本のAmazonでも同じタイトルで2002年に出版されたペーパーバックが1527円で販売されていました。ただし、現在は在庫切れで入荷未定ですが。また、番組ではレポートの『カストロ暗殺を政権の責任にできるか?』という設問部分を結論であるかのように引用しています……」(同・奥菜氏)

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