海外から注目“不思議な日本”のコロナ対策 デーブ・スペクター氏の目にはどう映ったか

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欧米でも日本が“手本”に

 デーブ氏は「基本的に、欧米メディアが列挙したポイントの全てを、要因と考えていいのではないでしょうか」と言う。日本人の生活様式そのものに死者数が少ない鍵がある、というわけだ。

「その中でも、特筆すべきは2点あると思います。まず1点目は、日本人の忍耐強い国民性です。ここで思い出すのは、『忠臣蔵』です。主君の無念を晴らすため、赤穂浪士は我慢に我慢を重ねます。あれをアメリカ人にやれと言っても無理でしょう。高額な罰金を科して外出を禁止しても、アメリカではロックダウン反対のデモが起きます。経済に大打撃を受けても、我慢して自粛を続けた日本人と対照的だと言わざるを得ません」

 2点目としてデーブ氏は、日本ではマスクの着用が日常化していることを挙げる。裏を返せば、それほど欧米社会でマスクは一般的なものではなかったのだ。

「そもそもアメリカでは当初、『マスクは必要ない』が公式見解でした。その後、アメリカの疾病予防管理センター(CDC)などが『感染防止に有効』と改めます。最も感染拡大がひどかったニューヨーク州では、医療現場で“命の選別”が起きるなど、大変にシビアな状況を経験しました。その結果としてマスクを着けることが普通になったのです。それでもマンハッタンで多くの人がマスクで顔を隠しているニュース映像を見ると、『ニューヨーカーが全員、コンビニ強盗になった』ような衝撃を受けます」

 一方でドナルド・トランプ大統領(73)はマスクの必要性を認めながらも、「自分はしない」、「記者の前ではしない」などと拒否の姿勢を鮮明にしている。これに賛意を示すアメリカ人も決して少なくない。

 デーブ氏は「トランプさんは顔のメイクが落ちるのが嫌でマスクをしないんでしょう」と笑い飛ばした上で、「日本人のようにマスク着用や自粛ムードで足並みを揃えることが、やはりアメリカ人は苦手です」と指摘する。

「アメリカは広いので、感染者数が極めて少ない州も存在します。州によって温度差もあるのは事実です。それでも共和党支持者が多い州はマスクの着用率が低く、民主党支持者の多い州では着用率が高いという調査結果も出ています。日本人のように国民が一丸となって新型コロナ対策を粛々と行うということは、やはりアメリカ人には難しいのでしょう。日本語に『馬鹿につける薬はない』という表現がありますが、今のアメリカの状況は『馬鹿につけるワクチンはない』と言ったところでしょうか」

 さらに日本人が新型コロナ対策で団結した要因として、「ダイヤモンド・プリンセス号の感染拡大を間近で見たことも大きいでしょう」と指摘する。

「世界中が新型コロナウイルスを『中国の問題』と受け止めていた時に、横浜港に停泊した豪華客船で感染拡大が発生し、それを日本人は逐一、報道で把握しました。残念ながら大きな被害が出ましたが、専門家は貴重な知見やデータを得ました。何より日本人が“国内問題”として新型コロナウイルスの恐ろしさを認識したわけです。これは不幸中の幸いだったと言っていいのではないでしょうか」

 日本の感染状況がメディアを通じて世界中に知られるにつれ、デーブ氏は「欧米と日本の“相違点”が減少していく」と予測する。

「アメリカでさえ、マスクの着用率が飛躍的に上昇し、人々は“ソーシャルディスタンシング”でお互いの間隔を確保し、飲食店でも感染防止に力を入れています。これはアメリカのコロナ対策で“日本化”が進んだ結果だと思います。でも、安倍首相が誇らしげに語るほど、行政は“日本モデル”を実施したでしょうか。それこそ当の日本人が疑問視しているはずです。アベノマスクにしても、届かない10万円にしても、日本人は国に怒っています。その一方で、日本人は一丸となって“日本モデル”を日常生活で実施しました。そこに欧米メディアは注目しているのだと思います」

週刊新潮WEB取材班

2020年5月31日掲載

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