デジタル捜査班長が伝授、ストーカー・誘拐から身を守る術 スマホを落としただけで…

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特定班に晒し屋

 また、犯罪性は薄くても、それ以上の被害をもたらすケースもあります。

「デジタル誘拐」という言葉をご存じでしょうか。

 赤の他人が、ネット上にある子どもの写真を、自分の子どもと偽ってSNSなどに投稿することです。かわいい子どもの写真を投稿することで、コメントや「いいね!」をたくさんもらうことが目的です。それ自体、許されることではありませんし、もしこの「誘拐犯」が何かの罪を犯したり、炎上したりすると、あなたの子どもがネットで晒されたりする恐れがあるのです。

 子どもの写真が親への嫉妬や恨みのはけ口に利用されるかもしれません。詐欺師が自分の写真としてあなたや家族の写真をアカウントに使用するかもしれない。

 また、幼児性愛者は世界中にいます。投稿した写真をコレクションにされたり、幼児ポルノのサイトに転載されたりするなど、世界中に拡散する恐れがある。

「わが子のかわいい姿を多くの人に見てほしい」「日々成長する姿を日記代わりに記録しておきたい」と、SNSには幼い子どもの写真がたくさん投稿されていますが、世の中には幼い子どもに特別な感情を抱く人がいるのも事実なのです。

 数年前、ある甲子園常連校の部員が最後の試合で負けた後、寮で泣きながらみんなで歌い、上半身裸で抱き合う動画をSNSに投稿したところ、いまだに拡散が続いています。感動の場面ですが、見る人によっては抱き合う若い青年の肉体美は、大変なお宝動画と映ったようです。写真や動画などの情報は、投稿者の想いとはまるで違う受け止め方をされる場合があります。

 よく話題になる不適切動画。ここ数年、InstagramやTikTokなどの投稿動画が炎上するケースが増えてきました。寿司チェーン店のバイトによる「ゴミ箱に入れた魚の切り身をまな板に載せる」などの悪ふざけ動画は、あくまで仲間内のウケ狙いで投稿したのでしょうが、友達の間で回っているうちに外部に拡散し、炎上してしまう。ネット上には「特定班」「特定屋」「晒し屋」などと呼ばれる、ネットで関連情報を集めて個人を特定する人たちがいます。彼らが登場し、競い合うようにして個人情報を暴いて拡散していくのです。

 前出の情報処理推進機構の調べによれば、ネット上に「悪意のある投稿」をしたことのある人は全体の18・3%に上ります。文化庁によれば、炎上に関与するのはネット人口の3%。日本のネット人口は1億84万人とされていますから、約300万人に上ります。不適切動画の投稿などで炎上するとこれだけの数の人が群がってくるのです。そうして晒された名前は「デジタルタトゥー」となり、ネット上を漂い続けます。

 ある高校で、生徒が教師を挑発し、体罰を加えるよう仕向け、それを撮影して投稿し、「大炎上」したことがありました。生徒はすぐに特定され、今でも高校名と「犯人」と検索すれば、リストのトップに出てきます。将来、企業に就職する際、採用担当者は内定を出す前に、その学生の名をネットで調べ、スクリーニングすることが一般的。それが、たとえ中高生の時のものであっても、ネット上にその刻印が残っていたとしたらどうでしょうか。判断に影響を与えることは否定できません。

 これらを防ぐには、まずTwitterならツイートはフォロワーのみ閲覧可能な非公開設定、相互フォローしていない相手のDM(ダイレクトメッセージ)の受信も拒否する設定にする。Facebookなら投稿は「友達限定」、プロフィールも友達リストも非公開に設定する。InstagramやLINEも同様です。これは大前提ですが、それでも安心はできません。「友達」の誰かが画像を外に出せば拡散は止められない。「友達」の中には一度しか会ったことのない「友達」、面識はないけど「共通の友達5人」のような表示を見て申請をOKした「友達」もいるはずですから。

 SNSへの投稿は、渋谷のスクランブル交差点に立ってプラカードを掲げるようなもの。私はそう捉えています。渋谷のスクランブルで人前に出しても恥ずかしくないもの以外は載せるのはNG。犯罪者は常にネット上に潜んで機会を窺っているのです。現実社会でやらないことはネット上でもやらない。その心構えが大切です。

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