デジタル捜査班長が伝授、ストーカー・誘拐から身を守る術 スマホを落としただけで…
冒頭から突然ですが、あなたのスマホ、「SIMカードロック」していますか。
画面ロックはしている。暗証番号も単純な数字ではないし、誕生日や固定電話の番号などから類推される数字でもない。だから安心と思っている方も少なくないと思いますが、それでは不十分。あまり知られていませんが、「SIMカードロック」まで行わないと、決して安全とは言えないのです。
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日本におけるスマホの利用率は87・0%。最も高い20代では99・0%。それがどれだけの数、紛失しているかご存じでしょうか。
警視庁の調べによれば、2019年に出されたスマホや携帯電話の遺失届は約25万件、そのうち持ち主のもとに戻ってこなかったものは約10万件です。東京都の現在の人口は約1400万人。このうちスマホを持っているのは87%ですから、1220万人です。うち1年で25万件ということは、10年で250万件紛失している計算になる。つまり都民は、10年以内に4~5人に1人はスマホを紛失するという計算になります。しかもそのうち1~2人は手元に戻ってこない。自分は絶対に無くさないとはとても言えない割合であることがよくわかると思います。
スマホは、一度は紛失してしまうものという前提で扱った方がいい。では、あなたのスマホには、一体何が入っているのでしょうか。
ありとあらゆる個人情報。家族や恋人、友人知人の情報。クレジットカードなどお金に関する情報。誰にも知られたくないシークレットな情報も含まれているかもしれません。スマホを無くせばこれらが他人の手に渡ってしまう。「スマホを落としただけなのに」という映画がヒットしましたが、犯罪者の手に落ちれば、あの手この手で利用されるはずです。
私は3年前に退職するまで、埼玉県警に22年間勤務。最後の5年間は、殺人や強盗など凶悪事件に携わる「捜査1課」の「デジタル捜査班」班長を務めていました。犯罪の加害者や被害者のスマホや携帯電話の中身を解析し、捜査に役立てたり、証拠化したりする仕事です。電話帳やSNSを見れば交友関係がわかりますし、ネットの閲覧履歴を見れば、興味関心の範囲がわかる。キャッシュレスサービスを使っていれば、金銭を巡る状況もわかります。それを捜査に役立てる。中身を見たスマホや携帯は、700~800台に上るでしょうか。警察だからといって、特殊な機械やテクニックを使っているわけではありません。中身を見るだけで持ち主のことはおおよそわかってしまうのです。その経験を基に、『あなたのスマホがとにかく危ない』という本を上梓しました。
スマホを無くし、ロックを解除されてしまえば、クレジットカードや電子マネー、キャッシュレス決済の悪用、SNSアカウントの乗っ取り、なりすまし利用、振り込め詐欺などへの犯罪利用、個人情報の売却、スマホ本体の転売など、さまざまな犯罪やトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
私の知人の会社員に、スマホを落とし、それを拾った20代の若者から、「マズイ写真」をネタに500万円を強請られた人がいます。この会社員はiPhoneの画面ロック番号が「123456」。最も安易なパスワードでしたから簡単に破られました。「111111」「123123」といった単純な数字、あるいは、固定電話や生年月日と関係しているのもNGというのは広く知られた話です。また、指でなぞる「パターン認証」の場合も、「Z」「L」などのアルファベット型や「1」「3」などの数字型、「コ」「レ」などのカタカナ型は単純ですし、覗き見に弱いのでNG。それにもかかわらず、人々の警戒心は薄い。独立行政法人「情報処理推進機構」の調べによると、「パスワードは誕生日など推測されやすいものを避けて設定している」人の割合は47%と5割にも届きません。しかも、携帯に慣れているはずの若い世代ほどこの意識は低く、10代、20代ともなると4割にも満たなくなるのです。
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