全公演中止の舞台「桜の園」、それでもギャラを払う“シス・カンパニーの心意気”

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ギャラは100%

北村:そりゃあ残念だったわよ。ゲネプロの前日に中止を決めたから、通しで舞台やることもなく終わっちゃったんだから。

――ギャラを支払ったと聞くが。

北村:そりゃあね。でも、松竹さんだって、東宝さんだって、うちの役者たちに払ってもらいましたから、うちだけじゃない。

――失礼ながら、松竹、東宝とは会社の規模が違う。

北村:アハハ、そうよね。でも、うちは舞台制作もやるけど、芸能事務所でもあるから、マネージメントもやるわけです。マネージャーとしてギャラの交渉もするものですから、うちの舞台が中止になったからといって、何も払わないというわけにはいかないんです。

――出演料は本来の額の何割ほどだったのか。

北村:全額、100%ですよ。

――全額出したんですか!

北村:いくら公演はできなかったからといって、ひと月以上も拘束しているんですから。その間のお金がなかったら、出演者もスタッフも大変じゃないですか。

――確かに正論だが、公演がなければシス・カンパニーには一銭も入らないことに。

北村:そう、出ていくお金しかない。舞台も衣装も、何から何まで……だからといって辛抱してとは言えないもの。

――数千万円の出費だろうか。

北村:数億円よ。国が緊急事態宣言を出して、都から書面で公演中止の要請が来たけれど、補償はないって言うんだから、身銭切るしかないじゃない。

――シス・カンパニーが作った舞台は失敗がないと言われる。とはいえ、舞台公演は年に4~5回でしかない。かなりの痛手に違いない。

北村:そうでもしなくちゃ、役者だってスタッフだって、今後お付き合いしてもらえないでしょう。これから先、生き残るためでもあるんです。

――ところで、「桜の園」はコロナ禍が終息したら、公演するのだろうか。

北村:これだけのメンバーをもう一度、一堂に集めることは難しい。皆さん忙しいのですから。誰かがOKでも、他の誰かの都合が悪いとか、悶々とするより、一から新しいものを作ったほうがいいわ。「桜の園」は“幻の名作”として、その先を考えていきます。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月30日掲載

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