コロナ患者激増のブラジル「ボルソナロ大統領」 放送禁止用語連発の閣議ビデオに国民は騒然
さすがに支持率は低下
この疑惑を分かりやすく説明するためには、セルジオ・モロ法務・公安相(47)が4月24日に辞任した経緯に触れる必要がある。ジャーナリスト氏に解説してもらおう。
「モロ氏は判事として、前政権にはびこる汚職を徹底的に捜査しました。その硬骨の姿勢は有権者の高い評価を受け、いわば国民的な英雄となったのです。18年の大統領選でボルソナロ氏が勝利すると、彼は政敵にあたる左派政権の汚職を摘発したことや、国民的人気を高く評価して法務・公安相に任命したのです。ところが、上院議員を務めるボルソナロ大統領の長男がリオ州の議員だった頃、日本円で約3500万円にのぼる使途不明金や、秘書給与を詐取していたりしたのではないかという疑いが浮上したのです」
リオ州の警察は詐欺、業務上横領、マネーロンダリングなどの容疑で捜査を開始。これを着実に進めていこうとするモロ法務・公安相と、捜査を妨害しようとする大統領が激しく対立する事態になったのだ。
ボルソナロ大統領の2番目の妻にも司直の手が伸びるなど、捜査は進展を見せた。すると大統領は“奥の手”で対抗した。
「捜査にあたっていたリオ州警察の本部長を自分の息のかかった人物にとりかえるように、モロ法務・公安相に圧力をかけ、それが受け入れられないと、独断で本部長を解任してしまったのです。これに激怒したモロ法務・公安相は辞表を叩きつけ、記者会見で『大統領が捜査妨害を行った』とぶちまけました。そして、モロ氏は閣議のビデオについて開示を求め、それを最高裁が認めたのです。元判事という経歴の通り、モロ氏は法律家です。こうした法的措置は、お手の物と言えるでしょう」(同・ジャーナリスト氏)
結果、ボルソナロ大統領の支持率は、今や3割を切っているという。大統領制のため任期は保証されている。日本の首相のように支持率低迷が“政変”に直結する状況とは異なるが、弾劾を求める動きは加速しているようだ。
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