石田純一が語る「コロナ肺炎地獄」からの生還 “医師は「もうダメなんじゃないか」と…”

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アビガンは2週間で

 その間の治療ですが、アビガン、血液の凝固を防ぐ薬、尿酸値を下げる薬などを、服用したり点滴したりしました。アビガンは入院初日から飲みはじめましたが、服用前に「望んで投与の治療を受ける」という書類にサインをしました。肝臓や腎臓に副作用が出ることが多いらしいのです。最初の3日間は朝晩9錠ずつ、その後は4錠ずつでしたが、服用量と期間が決まっているらしく、2週間ほどで服用できなくなりました。まだ肺の影が消えたわけではなかったので、不安になりましたね。

 医師でさえ「詳しいことはまだわからない」と言っていた新型コロナウイルスですが、脳血栓や肺血栓を引き起こす恐れもあるそうです。それを警戒し、血液検査も毎日受けました。また僕の場合、尿酸値が見たことない数値まで上がりました。人間ドックでは4~5台だったのに、8まで上がったのです。薬の副作用ではなく、ウイルスの仕業らしいです。

 食事は1日3回、魚中心に栄養バランスが考えられたものを、頭からつま先まで覆う重装備の看護師さんが、部屋まで運んでくれました。水1本持ってきてくれるときでも、病室に入るときに防護服をまとい、出るときに捨てていました。

 一方、医師とはICUの手前まで行った日と入退院時に顔を合わせただけで、治療方針などの話は基本的に電話。実務はすべて看護師さんです。勇気が要るすばらしい献身ぶりで、感謝しかありませんし、尊敬の気持ちでいっぱいです。いつかなんらかの恩返しができたら、と考えています。

 ところで、僕はタバコを吸わず、毎日5キロ走るなど健康に気をつかっていましたが、入院に際して尽力してくれた懇意の先生は、常々「過信してはいけない」と言っていましてね。入院時、病棟を移動中に一度だけすれ違いましたが、力強く「絶対に治しますから」と言ってくれて、勇気づけられました。

 退院した日は子どもたちと接触しないように、家に着くと部屋に直行し、食事は妻が部屋の前まで運んでくれました。いまも諸々生活の世話をしてくれて、本当にありがたいです。

 子どもたちはベランダから窓越しに顔を見せてくれます。1男2女がそろって朝ご飯を持って外に出て、ベランダから僕の顔を眺めながら食事したりして、4歳の娘は去り際に「また明日ね」と声をかけてくれます。退院した日には「パパ、よくなってよかったね。明日はもうちょっとよくなるよ」と言ってくれましてね。癒されます。

 さて、退院から4週間経てば、ぶり返すことはないと言われますが、治ってから、どうやって食べていけばいいのか――。それは不安です。レギュラー番組はあるものの、沖縄の店は3月まで月400万円の売り上げがあったのに、4月は13万円。国は補償してお金を出せばいいと思っているフシがありますが、お金だけの問題ではなく、我々みんなが築き上げてきた人生、人間としてのプライドや価値観の問題でもあるのです。

 また、ワクチンや治療薬ができるまで、新型コロナとは共生していくことになりますが、今後、新しい感染症の危機にさらされる可能性だってあるわけで、そう考えると国はのんびりしすぎのようにも思えます。

 たとえばドイツには、国立科学アカデミー・レオポルディーナという組織があり、日本の専門家会議のようなものですが、医学だけでなく、数学、経済学、環境学、心理学、社会学、法学など、あらゆる分野のエキスパートが集まっています。このように、日本も他国のいいところを積極的に取り入れ、みんなで一体になって新型ウイルスを乗り越えていきたいですね。

週刊新潮 2020年5月28日号掲載

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