コロナは「肺炎」だけではなかった 血栓、脳梗塞を引き起こす仕組みとは
知らぬ間に進行する「沈黙の肺炎」こそ新型コロナウイルスの恐ろしさと見られていた。しかし、時が経つにつれ、各国で血管に炎症が起きる「川崎病」と似た症例が報告され始めた。すなわち、“敵”の狙いは肺だけでなく、全身の血管にあったのだ。
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川崎病は1967年、小児科医の川崎富作氏により発表された。アジア圏の特に乳幼児に見られる病気とされ、原因は不明。現在、日本では年間1万5千人ほどが発症しているとされる。罹患すると、全身の中小の血管に炎症が起こり、発熱、発疹などが現れる。それが原因で心筋梗塞を引き起こすこともあるという。一見して新型コロナウイルスとは無関係に見えるのだが、欧米では川崎病と似たような症例が報告されている。
取材する記者が言う。
「アメリカの疾病対策センターでは、発熱があり、複数の臓器や血管で炎症が起きた10代以下の患者について、報告するように通達を出しています。川崎病と似た症状はニューヨーク州だけでも100人を超え、警戒を強めているのです」
日本ではどうか。日本感染症学会専門医で東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科の寺嶋毅教授によれば、
「川崎病は基本的に子どもの病気です。欧米では新型コロナウイルスで重症化した子どもが一定数いるので、川崎病のような症状も報告されています。一方、日本ではそもそも、子どもの重症患者がほとんどいないため、そうした症例は確認されていません」
裏を返せば、今後感染が拡大していくと、他人事ではすまなくなる、わけだ。
多彩な症状
肺炎が主症状とされてきたコロナはなぜ、血管に炎症を起こすのか。
国際医療福祉大学の松本哲哉教授が解説する。
「ウイルスそのものが血管に作用していると見られます。すると大きく分けて二つの変化が現れます。一つが血管の炎症で、もう一つが血栓です。血管の炎症が起きると、川崎病のような発疹や発熱が見られます。症状が進み、血栓ができると、軽度ならしもやけ、重症になると、脳梗塞や心筋梗塞が起こります。海外では若い方でもこうした合併症で亡くなっているのです」
先の寺嶋教授は血栓が形成される過程での、免疫細胞の“暴走”を指摘する。
「肺は毛細血管に覆われ、血液の流れが豊富な器官。肺にウイルスが入ると免疫細胞が働き、追い出そうとしますが、この免疫細胞が必要以上に働き過ぎて、血管まで攻撃してしまうことがあります。これが過剰免疫、サイトカインストームと呼ばれる状態です。これにより、炎症を起こした部分から血栓ができ、脳梗塞などを引き起こすのです」
肺炎のみならず、血管を通じ全身の臓器に多彩な症状を見せるこの病、さしずめ「コロナ・シンドローム」と捉えるべきだろう。