安達祐実の私生活を覗き見する「捨ててよ、安達さん。」キャスティングの完璧さよ
「この役ならこの人しかいない!」というドラマって、実はそう多くない。逆に「これはあの人のほうがいいのに」と勝手に妄想キャスティングする楽しみはある。が、久々に「これぞ!」と思う作品があった。「捨ててよ、安達さん。」である。
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安達祐実が本人役を演じ、雑誌の連載企画で家の中のモノを捨てていくという設定。ところが、そのモノたちが安達の夢の中で擬人化され、毎回安達の家を訪問。それぞれの主張をぶつけてくる。モノたちは基本的に廃棄を要求するが、存在を忘れられていることやぞんざいに扱われていることに怒ったり悲しんだりと、感情を露にする。安達に捨てさせる前に対話を迫るのだ。安達も最初は戸惑うが、だんだん楽しむように。対話の末、捨てる決意を固める。
安達でなければこのドラマができない理由。それは、2歳の頃から芸能生活を送ってきた安達ならではのエピソードが不可欠だから。捨てられないモノの中には、彼女の特殊な人生が凝縮。
初回は、捨てるに捨てられない「子役時代のドラマ代表作の完パケDVD」だった。いわずもがな、アレな。このDVDを演じたのが貫地谷しほり。代表作に縛られ続けた安達の、苦悩の原点が詰まっている。卑下する安達を励まし、最終的には貫地谷も一緒にDVDを観て泣くという、システムとしてはおかしな話に。
第3話では高校時代の初代ガラケーを加藤諒が演じた。「毎日仕事で青春なんかなかった」と吐き捨てる安達に、忘れていた青春を思い出させてくれる加藤。女優・安達祐実の芸能人生に思いを馳せる構成なのだ。
また、安達の性格や習性を覗かせる話も。親戚でもないがずっと応援してくれた光代おばさんの「悪趣味な手作りの時計」を捨てられない。これを片桐はいりが演じたのだが、「処理に困るハンドメイド系」に悩む人は思わず膝を打ったはず。モノを演じる俳優陣がこれまた適役で、そこはかとなくおかしいし、そのモノに見えてくるのが不思議。
最も好きだったのは第2話。臼田あさ美と戸塚純貴がやってくる。輪ゴムと書店のレジ袋で、安達家には一緒に来たという。輪ゴムの臼田は冷蔵庫のフックの一番上にかかっているがために酷使され、疲弊。一方、書店のレジ袋である戸塚はゴミ袋にもなれず、かといってサブバッグ(鞄と共に持つオシャレ重視の袋)にもなれず、どうにも使い道がなくて1年間放置されていた。うちにもあるある! 安達が紅生姜をちびちび食べる習性も垣間見え、親近感と私生活覗き見感を堪能。
で、このモノたちの案内人というか、夢に必ず出てくるのが、こまっしゃくれた口調の少女・川上凛子だ。川上が何なのかは明かされていないが、とにかく可愛い! 優柔不断で八方美人な安達の代わりに、舌鋒鋭く毒とツッコミと合いの手を入れる。存在感のある子役で、最高の布陣が完成。
捨てられた古道具が人間に復讐する「付喪神絵巻」を思い出したが、彼らは逆だ。心の整理の機会を与えてくれる。毎回ラストの安達の表情が、それを物語るのだ。