土砂崩れで亡くなった「ミキモト元社長」 “春日”姓の理由

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 JR鎌倉駅からバスに乗ること約10分、「小坪」という漁港の先に小さな岬が突き出ている。潮が引くと波打ち際を伝って先端まで行くことができる、知る人ぞ知るウォーキングスポットだ。

「ミキモト」元社長の春日豊彦氏(74)が愛犬を連れて散歩に出かけたのは4月20日の夕方。ところが、そのまま連絡が取れなくなってしまい、4日後に遺体が発見される。岬の崖下で土砂の下敷きになっていたのだ。

「現地は波に洗われて地盤がもろい場所。春日さんは散歩中に土砂崩れに巻き込まれたと見られています」(捜査関係者)

 春日氏がミキモトの社長を務めていたのは1993年から2003年まで。当時は「御木本豊彦」という名前だった。

 知人が振り返る。

「豊彦さんは創業者の御木本幸吉から数えて4代目という立場でしたが、もともと“春日”という苗字で御木本家の血筋ではありません。上智大を出て、海外の証券会社や商社で働き、幸吉の曾孫娘の本間香さんと結婚したことからミキモトの経営に携わるようになったのです」

 96年、先代の美隆氏(幸吉の孫)が急逝すると後継者問題が浮上する。すでに社長を豊彦氏に任せていた美隆氏だが、子供がいなかったのだ。

「そこで美隆さんの未亡人が、豊彦さん夫婦と養子縁組をして、御木本の苗字を継がせたのです」(同)

 が、人生は何が起きるか分からない。

 01年に香さんが病気で亡くなると豊彦氏はわずか1年で再婚。これに怒った美隆氏の未亡人が養子縁組を解消してしまったのだ。その後もしばらく社長を続けた豊彦氏だが、もはや会社に居場所はなかったといわれる。

 世界の真珠王「ミキモト」を知らぬ者はいまい。その苗字は春日氏にとっては重すぎたのか。

週刊新潮 2020年5月21日号掲載

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