テレ朝「グッド!モーニング」の真逆報道で思い出すチーフプロデューサーの“古傷”
「グッド!モーニング」(テレビ朝日)が新型コロナウイルス関連の報道で、取材した医師の意見を真逆に報道したという問題は一応決着した。5月12日の放送で坪井直樹アナ(50)が謝罪したからだ。もっとも、とても真摯に反省しているとは思えないものであった。番組トップであるチーフプロデューサー(CP)を知るテレ朝関係者からは、「あの人ならやりかねない」との声が……。
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テレ朝の公式HPを開くと真っ先に表示されるのが、《#医療従事者にエールを》。ところが、その医療従事者を裏切る形となったのが、朝の情報番組「グッド!モーニング」だった。
まずは5日の放送を振り返ってみよう。番組では、「PCR検査 目安を見直しへ」とのコーナータイトルの下、MCの吉野真治アナ(41)と新井恵理那アナ(30)が進行した。
吉野:感染を疑われる人がPCR検査を受けられず、病状が悪化することが相次いでいることなどを受け、加藤厚労大臣は検査基準を見直す方針を明らかにしました。
新井:基準の見直しは、検査数を増やすことに繋がるのでしょうか。
――すでにこの時点で、“PCR検査を早急に増やすべし”という結論ありきの姿勢が感じられる。当然、この直後にリモートインタビューを放送された、澁谷泰介医師のコメントはそれに沿ったものに編集されたわけである。
質問:想定していた日本の医療体制と、実際、この現場に入ってみて、何か違いみたいなのはどのように感じましたか?
澁谷:なかなか話が詰められていなかったり、もちろんモノも足りなかったりしたので、この後どうなってしまうのかなという不安を4月の頭時点では漠然と感じました。
ナレーション:新型コロナウイルスに対する日本の遅れを痛感したと話すのは、最近までベルギーで心臓外科医として活動していた澁谷医師です。澁谷医師はベルギーが感染拡大のために“ロックダウン”をした3月に一時帰国し、神奈川県で非常勤医師として感染者の診察などに当たってきました。そこで愕然としたのが、クルーズ船ダイヤモンドプリンセスを巡って、世界でも早いうちに集団感染と向き合ったはずの日本の医療体制が整っていなかったことでした。
澁谷:どういった動線で患者を搬送して、どうやって診るのか。いろいろ対策が練りに練られているのかなと思っていたので、その違いはとてもびっくりしました。
ナレーション:さらにヨーロッパとの政策の違いにも戸惑ったといいます。
澁谷:すべての人にPCR検査をしないで、感染が疑わしい人にだけ検査をするという、世界的に見れば珍しい政策をとっていたんですけれども……。
――ここで澁谷医師の発言を遮るように、長いナレーションが被さるのだ。
ナレーション:ヨーロッパでは多くの国が大規模なPCR検査を早くから実施し、感染者の押さえ込みに乗り出しました。しかし日本では依然としてPCR検査に高いハードルが設けられているため、重症化しやすい患者を見逃すリスクがあるといいます。最前線の医療現場からも困惑の声が上がる中、政府は昨日、PCR検査を受ける際の目安を見直す方針を明らかにしました。
続いて、PCR検査を推進する山梨大学学長のインタビューに移るのだが、確かに澁谷医師まで検査を増やせと主張しているように感じられる。
そのため澁谷医師はFacebookでこう反論したのだ。
《インタビューでは、PCR検査に関してこれから検査数をどんどん増やすべきかと言ったテーマに繰り返しコメントを求められました。私は今の段階でPCR検査をいたずらに増やそうとするのは得策ではないとその都度コメントさせていただきましたが、放送では完全にカットされてしまいました》
《PCR検査を大至急増やすべきだという一連の論調の一部として私の映像が使用され、自身のインタビュー内容とは大きく異なる意見として視聴者の方に受け取れるように放送されてしまいました》
ネットでは「真逆報道」として広まり、テレ朝への批判が渦巻いた。そこで12日になって、坪井直樹アナからの謝罪となったのだが……。
謝ってない
坪井:さて、ここで番組からのご報告があります。先週、「グッド!モーニング」ではベルギーから一時帰国し、現在、横浜で非常勤をされている澁谷泰介医師に取材を行いました。木曜日に放送した際に「日本は疑わしい人だけにPCR検査をするという世界的に珍しい政策を取っていた」という澁谷医師のコメントの一部を紹介しました。ただ、その後、同じVTRの中で別の学者の主張もお伝えしたことで、結果として、澁谷医師も「PCR検査をただちに増やすべきだ」という、そういう主張をしている印象となりました。そこで今日は、その澁谷医師の取材時のご意見を改めてお伝えします。
――謝罪ではなく、ご報告だった。改めて放送された澁谷医師のインタビューは5日の放送とはまったく異なるものだった。
澁谷:私、専門が心臓外科ですので、感染に関してはベルギーでは前線で診療している状態ではなかったので、そこだけご了承いただきたいのです。PCR検査を今後増やしていくこと自体は大事なことではあるのですけれども、今現在、現場で不必要な検査が増えることは現場としては全く望んでおりません。と言いますのも、感染が心配な方からの電話が、救急外来に今も、ひっきりなしにかかってきます。たとえば僕が働き出した4月頭と比較しましても、体感としては相談のお電話が3倍、4倍、それ以上になっています。もちろん基礎疾患があるですとか、感染している家族と濃厚に接触していたとか、プラスアルファのものがある方には積極的に検査をする、またはそれができるように検査数を増やすことは大切なことですけども、今現在、急場で検査数だけ増やしてくれと言われても、ちょっと難しいなというのが正直なところです。
――これほど明確に、むやみに検査を増やすことに反対しているにもかかわらず、5日の放送では賛成派にさせられたわけだ。澁谷医師は、医療従事者の現状としてN95マスクや防御服の不足についての意見も放送されたが、これは5日の放送では全く触れていない。そして、坪井アナがまとめに入る。
坪井:つまり、PCR検査が増えることについては、澁谷医師は取材の中で、「一般の人、心配だと思っている人たちにとっては良いこと」だとおっしゃっているのに対して、一方の医療現場では「ただひたすら数が増えるのは医療崩壊、医療の逼迫につながるおそれがあるので、その辺については望まない」とおっしゃっているんですね。私たちはこの医療現場の声の部分を放送につなげる、その受け止めを疎かにしていました部分がありました。この辺については大変おわびいたします
テレ朝関係者が声をひそめて語る。
「報ステ」での過去
「“お詫びいたします”と言っても“この辺については”なんて余計なことを言うもんだから、開き直っているようにすら感じます。そういえば、『グッド!モーニング』の責任者であるCPって、以前も同じようなことやっていましたからね。社内では、あの人がまたやらかしちゃったんじゃないか、と言う人もいます」
同じようなこと、とは?
「もう10年以上も前ですけど、マクドナルドの日付改竄事件を覚えていますか?」
07年11月のことだ。マクドナルドのフランチャイズ店が商品に表記される調理日時の改竄、賞味期限切れ原材料の使用、賞味期限切れ商品の販売をしていたという事件だった。
「07年11月27日の『報道ステーション』が、直営店の元店長代理が制服姿で証言し、フランチャイズのみならず直営店でも調理日時の改竄が行われていたと報じました。しかし、放送直後から“辞めた人がなぜマックの制服を着ているのか”“あの制服はアルバイトが着るものでは”といった視聴者からの指摘が殺到。結局、マックの元従業員はテレ朝の関係者だったことが発覚し、12月7日にはMCの古舘伊知郎さん(65)が謝罪することになりました。このVTRを作ったのが、当時ディレクターだった『グッド!モーニング』のCPなんです」
この一件は、BPO(放送倫理・番組向上機構)の審議にかけられた。そこでは制服着用の上で発言してもらうという判断がディレクターの判断で行われたことや、古館の謝罪も問題視された。
古館は「ここで視聴者の皆様、お知らせすることが実はあります」と前置きして、VTRが作製された経緯を説明し、「これは本当に間違ったやり方です。申し訳ありませんでした」と謝罪した。しかし、彼独特の最後の一言がいけなかった。
「あえて『報道ステーション』は、そのことを報告させていただきました」
BPOは、テレ朝に「あえてとはどういう意味」なのか確認しているのだが、テレ朝は「包み隠さず自ら進んで不適切な表現方法を認めてオープンにする」という意味だと答えた。これに対し、検証委員会の報告書ではBPOの怒りとも思える言葉が残されている。
《言うまでもなく、「あ(敢)えて」とは「(しなくてもよいことを)強いてするさま。わざわざ。無理に」(大辞林第2版)、「しいて、おしきって」(広辞苑第6版)の意味であり、内外から多くの指摘を受け、10日も経ってからの「おわび(謝罪)」に置いて使用するのは、極めて不適切な表現である》
「マックの一件は、紛れもないヤラセです。今回の件でも、番組の責任者として、CPは反省すべきでしょう。普通、あれだけのことをやってしまうと、左遷されておしまいのはずですがね。なぜか『グッド!モーニング』のCPとして出世しています。うちの会社もどういう人事をやっているのやら……」(前出・テレビ朝日関係者)
13年前も今回も、謝罪が下手という点は共通している。