「香港の女神」が告発「習近平」はコロナ利用でデモ締め付け
最近は「中共ウイルス」とも言われているらしい。疫病の責は中国共産党にあり、というわけだが、外ならぬ香港にも暗い影が――。かの地で狼煙を上げた民主化要求デモの中心的存在で、「民主の女神」と呼ばれる周庭(英名 アグネス・チョウ)さん(23)が、深刻極まる実状を語った。
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「香港政府はいま、新型コロナウイルスの感染拡大に便乗して、香港の民主化を求める運動家への弾圧を強めています」
周さんの声色は切実である。昨年のデモが日本でも大きく報じられ、彼女がメディアの取材を連日受けていたときと同様、その日本語は流暢だ。
「とくに3月末に成立した規則や禁止命令を隠れ蓑にしていて、その手口は悪質かつ巧妙化する一方です」
それは3月27日に採択された予防及控制疾病条例下の規則と、翌28日に林鄭月娥行政長官が発表した「今後2週間は公共の場所で5人以上が集まることを禁じる」命令のこと。
条例は飲食店を主な対象に、利用客に飲食後のマスク着用を義務づけたほか、店側にはテーブルの間隔を1・5メートル以上空けることを求めている。さらに一つのテーブルに5人以上が座ることを禁じたりと、都合6項目の順守事項が規定された。違反者には最高5万香港ドルの罰金と6カ月の禁錮刑が科される。
周さんは「つい先日、私が所属する政治団体『香港衆志』のメンバー2人が逮捕されました」と言い、
「彼らの逮捕容疑が、まさに禁止命令違反でした。これまでは“違法集会への参加”という容疑が用いられ、これに人権派の弁護士や団体は“恣意的な摘発だ”と激しく反発してきました。当局は今後、防疫を摘発の理由に掲げ、そこに“5人以上が集まった”という事実さえあれば、批判をかわせてしまうのです」
人気アプリを悪用
なるほど、北京政府の傀儡とされる香港当局は、コロナ対策を名目に、民主派への弾圧を“合法化”する完全無欠の手段を手にしたわけだ。
周さんが続ける。
「香港では昨年の大規模デモ以来、商業施設の政治的なスタンスが可視化されるアプリが人気です。たとえば『黄青2色店舗分布マップ』というものがあります。スマホやパソコンで地図を開くと、それぞれの店の政治的な立場が一目瞭然。デモを支持する民主派のお店は黄色で、逆に親中派のお店は青色で表示されます。2014年のデモ『雨傘運動』の参加者が黄色の傘を持ち、一方の親中派が青いリボンを着けていたのがその理由。私たちが黄色に分類された店でしか食事や買い物をしないのと同じように、市民はお店選びの参考に利用できます」
ところが、だ。
「残念なことに、警察がこのアプリを民主派への嫌がらせに利用しているんです。警察は黄色の店を集中的に取り締まり、お仲間である青色の店はノーチェック。いつだったか、10人くらいの警官隊が“黄色店”に押しかけ、ほとんど客はいなかったというのに、店主に“テーブルの間隔が1センチ足りない”と難癖をつけ、彼をそのまま逮捕したなんてこともありました」
国際社会が敵とすべきはウイルスばかりでない。コロナを蔓延させた中国、そしてその横暴もまた然りだ。