「エール」東京編で脚光の26歳「加弥乃」芸歴24年で元AKBという意外な経歴

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“知られざる名脇役”

 だが、AKB48としての活動はごくわずかな期間であった。結成から約2年後の07年11月30日の「AKB48 ひまわり組 1st Stage『僕の太陽』」千秋楽公演をもって、同グループを卒業してしまったのだ。

 それはAKB48が国民的アイドルグループに成長する前のことだった。そのため、当時から熱心にAKBを追いかけていたファンならともかく、一般の人にとって、彼女の在籍はあまり知られていないのだ。

 とはいえ、AKB48卒業後も芸能活動を継続し、数々のドラマや舞台に出演していた。10年にはアニメ「ジュエルペット てぃんくる☆」(テレビ東京系:10~11年)の主題歌である「Happy☆てぃんくる」を“増山加弥乃withルビー&ラブラ”として歌い、同曲のCDもリリースしている。

 ところが11年のこと。この年の4月に映画「アバター」[和田篤司監督:太秦]の公開と、7月の舞台「三ツ星キッチンミュージカル LOVE」の出演を務めあげると、芸能活動を休止してしまったのである。

 なお、12年3月に出演した映画「青いソラ白い雲」[金子修介監督(64):ヘキサゴン]が公開されているが、もちろんこれは芸能活動休止前に撮影されたものである。

 芸能活動を再開させたのはその約2年後のこと。13年7月に公開された映画「生贄のジレンマ 上」[金子修介監督:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント]に現在の芸名である加弥乃で出演し、復帰を果たしている。

 以前はドラマや舞台出演が多かったが、復帰後は精力的に映画出演をこなし、15年には主演映画の「W~二つの顔を持つ女たち~」[藤田真一監督(49):アイエス・フィールド]も公開されている。

 ちなみに、この映画で彼女が演じたのは女子大生の蕾という役である。親友に肩代わりさせられた借金返済のため、ガールズバーで働くことになったのだが、この蕾は仕事を真面目にやらない“クズ女”で、正直、主人公とは思えないほど鼻につくキャラクターであった。

 とはいえ、そんな“アンチ・ヒロイン”を加弥乃は好演、彼女自身が可愛かったこともあり、「まぁ、許せるか」と思える女性像を作り上げていたのだった。

 気になるプライベートにも言及しておこう。趣味は料理、カメラ、日本舞踊にギター弾き語りで、特技は側転やバク転、アクロバットといったアクション、ダンス、そしてアルトサックスといったところ。

「エール」で演じているあかね同様に、音楽好きだということが分かる。実は妹も芸能人で、テレビアニメ「リトル・アインシュタイン」(テレビ東京系・06年10月~07年)でアニー役の声優を務めたシンガー・ソングライターの朱里乃が、その人だったりする。要は“音楽姉妹”なワケで、今回のあかね役はまさに“天命”でもあったワケだ。

 最後に、“実は彼女はこんなドラマに出演していた”という作品リストをいくつか列挙しておきたい。

▼17年12月 「水戸黄門」(BS-TBS)
▼18年1~12月 「西郷どん」(NHK総合など)
▼19年8月 「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日)
▼19年10月 「相棒 season18」(※テレビ朝日開局60周年記念スペシャル)
▼20年1月 「BS時代劇 大岡越前5」(NHK BSプレミアム)

 どれも広く世間一般に知られた作品ばかりである。まさに“知られざる脇役”だ。

 つまり26歳で芸能キャリア24年という“若き熟練者”ぶりを、この「エール」でついに存分に発揮しているワケだ。

 加弥乃は、主人公の古山裕一はもちろん、上司である廿日市も、ときにはてのひらで転がすようなところがある杉山あかねを絶妙に演じている。

 ズバッと自分の意見を言うときは言うが、昭和初期の女性らしく基本的には上司の一歩後ろに立っている点がその一例だろう。“押し”と“引き”の加減が見事で印象に残るようだ。

 彼女は子役からアイドルを経て女優への道を進んだものの、なかなかスポットライトが当たらなかった。そんな遅咲き女優・加弥乃の進撃が、ここから始まるのかもしれない。

上杉純也

週刊新潮WEB取材班

2020年5月20日掲載

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