「日本のコロナ対策は奇妙に成功」と米外交誌、日本のメディアもようやく気づき始めて……
感染ピークは3月27日
これまで外国メディアは、日本を批判する記事が圧倒的に多かった。例えばBBCニュースの日本版公式サイトは4月30日、「日本の新型ウイルス検査、少なさに疑問の声」という記事を掲載した。執筆したのは《ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ東京特派員》だ。
《日本で起きていることを理解したがっている人にとってより不可解なのは、なぜ新型コロナウイルスの感染症COVID-19の検査がこれほど少ないのかだ。ドイツや韓国と比べたとき、日本の検査件数は0を1つ付け忘れているようにみえる》
だが、評論家で「アゴラ研究所」所長の池田信夫氏は、5月9日に「アゴラ」に掲載した「日本人が新型コロナに感染しにくいのはなぜか」で、この記事に異議を唱えた。
《このウィングフィールド=ヘイズ記者はドイツや韓国の検査件数を調べたのかもしれないが、普通の人は検査件数なんか知らない。大事なのは何人死んだかである。彼が「先進国」として日本が見習うよう求めているイギリスのコロナ死亡率は日本の100倍なのだ》
《ところが、この記事にはそれがまったく出てこない。日本の検査体制は不十分かもしれないが、たくさん検査して3万人も死んでいるイギリスと、検査は少なくても死者が550人の日本のどっちがいいのか。答は明らかだろう》
《要するに日本は、コロナで世界の超優等生なのだ。安倍政権の感染症対策には国民の80%が不満らしいが、結果がすべてである。だが日本政府は、それをPRできない。なぜこんなにうまく行っているのか、自分でもわからないからだ》
ちなみにWHOが5月17日に発表したレポートによると、イギリスの感染者数は24万3695人で、死者は3万4636人だ。
一方の日本は、感染者数が1万6285人で、死者は744人。前者は約15倍、後者に至っては約46・5倍もの開きがある。
池田氏は、フォーリン・ポリシーの記事も読んだという。まずは感想を聞いた。
「私は3月からずっと、ロックダウンも自粛も必要ないと訴えてきました。しかしメディアの論調も世論も、その逆だったように思います。先々週くらいから、日本の報道機関から『どうして日本は感染者・死者数が少ないのでしょうか』と取材の依頼が来るようになりました。やっと論調が変わるかもしれないと期待をしています。フォーリン・ポリシー誌の記事を見ると、海外メディアも日本の現状を正確に直視できるようになってきたのかもしれません」
池田氏は、「死者の数を考えれば、これまで欧米のメディアが日本の新型コロナ対策を批判するというのは、完全なお門違いだったと思います」と指摘する。
「喩えて言えば、学校のクラスで1番成績の悪い生徒が、オール5の優等生に『もっと勉強をしろ』と説教をするようなものです。一時期、『日本も2週間後は、アメリカのニューヨークのようになる』という予測が、まことしやかに語られていました。しかし、あれから1か月以上が経ちましたが、日本国内で感染爆発は起きていません」
ただし池田氏は、4月7日に表明された緊急事態宣言の発令は「誤りだが、当時の判断としては仕方がなかったと考えます」と一定の評価を示す。
「2月上旬に日本に入ってきたのは武漢など中国が感染源で、これは弱毒性のウイルスだったと考えられます。そのため日本で感染爆発は発生しませんでした。一方、3月上旬にイタリアで起きた感染爆発は強毒性だったと考えられ、ヨーロッパで猛威を振るってからアメリカにも伝染します」
日本は1月31日に武漢などからの入国を拒否し、中国と韓国からの全面禁止は3月9日に行った。しかし、その他の国、特に欧米諸国は対応が遅れた。
「ヨーロッパからの入国拒否は3月21日、アメリカからの拒否は3月26日でした。このタイムラグにより、強毒性の新型コロナウイルスが日本国内に持ち込まれたと考えられます。感染者の数は増え、4月上旬に日本でも感染爆発が起きてもおかしくなかったのです。ところがなぜか、それは現実のものにはなりませんでした。厚生労働省の新型コロナウイルスクラスター対策班メンバー、北海道大の西浦博教授も、3月27日が新規感染者のピークだったことを後に認めています」
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