【コロナ禍】小池知事はなぜ都の「入院患者数」をごまかし「病床使用率」を隠すのか

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 東京都で医療崩壊が起きうるから、緊急事態宣言は解けない――というのが大方の認識のはずだが、都は入院患者数をごまかし、より深刻に装っていたのだ。

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 4月7日からの緊急事態宣言が出される前、小池都知事が総理官邸に日参しては、発令を促し続けたと、以前にも何度か触れた。

 その行動を、7月の都知事選を見据えてのパフォーマンスだ、と看破する向きもあるが、彼女がその危険性を訴えた「感染大爆発」が現実化し、都内の病床数が逼迫する恐れがあったのであれば、道理がなかったとは言い切れないだろう。

 ここにきてようやく、都内の新規感染者数は、8日連続で100人を、5日連続で40人を下回るほどに落ち着いてきたが(5月10日現在)、緊急事態宣言の発令後、一時は経路不明の感染者だけでも、1日に100人を超えていたのだ。

 だから、都内の病床はいまもかなり逼迫してはいまいか。実際、NHKが集計した「新型コロナ対応のベッド数と入院患者数データ」を確認すると、医療崩壊が起きていると思しき数字が刻まれていた。

 東京都の場合、「新型コロナ対応ベッド数」2千床に対し、「入院中の患者数(入院必要な人含む)」は2619人。「ベッドに対する割合」は131%と、2位の北海道と石川県の81%を大きく引き離し、ダントツなのである。

 ところが、都の感染症対策課に、入院中の患者数の内訳を尋ねると、返ってきたのは意外な答えだった。

「都のホームページには、入院中の患者さんは5月7日時点で2679人と記されています。このうち重症の方は87人で、全員が入院されています。一方、軽症中等症の方は2592人ですが、入院されている方、ご自宅にいる方、ホテルにいる方をまとめた数字になっています」

 131%という、患者がベッド数をはるかにオーバーしているかのような数字は、単に雑な集計のなせる業だった。むろん感染者数が多い他の道府県は、いずれも自宅療養者と宿泊療養者を入院患者に含めていない。緊急事態宣言の延長や解除に際して、カギとなるはずの東京都だけが、このように雑な数字を示していたのである。

 対策課の話を続けると、

「2千床のうち400床は重症者のためのもので、中等症の方は、残りの1600床に入ることになりますが、1600床がどれだけ埋まっているかについては、公表していません」

 と言う。医療崩壊を防ぐために国民が無理を強いられているのに、医療の現況を表す数字を示さないとは、さすが都民、国民を愚弄する知事のお膝下である。それでも、病床の埋まり具合を大雑把にでも示せないのかと、なおも粘ると、

「ベッドが埋まっているとなると、大変な事態ですが、宿泊施設に入っておられたり、自宅におられたりする方が、実際に入院されている方よりもはるかに多いわけですから、少なくとも病院があふれているといったことはないです」

 たとえば大阪府は、重症者のための病床188のうち61が埋まり、使用率は32・4%。軽症中等症のための病床は886のうち389が埋まり、使用率は43・9%(ともに5月7日現在)。こうした数字をすべてホームページで公表したうえで、医療崩壊を防ぐための警戒水域を、病床使用率が重症50%、軽症中等症60%と設定し、比較できるようにしている。

 ちなみに、重症者にかぎれば東京都の病床使用率は21・7%。優秀な大阪とくらべても余裕があり、警戒水域からはほど遠い。

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