コロナ禍の時効停止を 死亡ひき逃げ事件の時効撤廃を求める遺族の叫び
コロナで遺族活動に支障も
孝徳君の事件は時効延長になったが、代里子さんは「辛い思いをする遺族や被害者が他に出てほしくない」との思いから、死亡ひき逃げ事件の時効撤廃を求める活動を継続している。今年4月上旬には、東京・永田町で開催された国会議員らの交通安全議員連盟の総会にも出席。時効撤廃などを求める嘆願書を提出した。
その後も、国家公安委員会委員長や法務大臣の元を訪れ、時効撤廃を直接訴えることも模索したが、新型コロナの影響でそれは事実上不可能となっており、チラシ配布や手書きの署名活動はままならない状況を強いられている。それでも5月になってからは、国家公安委員会や法務大臣宛てに、死亡ひき逃げ事件の時効撤廃を求める要望書を郵送で提出し、孝徳君の事件についてもブログを更新するなど情報提供を呼びかける日々を過ごしている。
「時効は誰のためにあるのか」
代里子さんは活動を続ける中で、こう強く考えるようになった。確かに、孝徳君の事件は、適用罪名が危険運転致死罪に変更となり、事実上、時効は10年延びた。ただ、もしもこのまま情報が寄せられず、未解決でさらに10年が経過してしまえば、危険運転致死罪の時効も成立し、孝徳君の事件の捜査は打ち切られることになってしまう。
緊急事態宣言中だけでも時効を停止できないか――。「時効の壁」が重くのしかかる遺族からすれば、わずかな期間も惜しいと思うのは至極当然のことだろう。
実際のところ、過去の未解決の凶悪犯罪では、時効直前に解決したケースもある。1982年8月に愛媛県松山市で発生したいわゆる「松山ホステス殺害事件」では、当時の強盗殺人罪の公訴時効(当時15年)が成立する3週間前の1997年7月末に容疑者の福田和子(最高裁で無期懲役が確定後、和歌山刑務所に収容中の2005年3月にくも膜下出血で死去)が逮捕され、起訴されたのは公訴時効成立の11時間前だった。
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