令和のリカとカンチはマサとアユ!? 新「東京ラブストーリー」と「M 愛すべき人がいて」に見るトレンディドラマの変化と終わり

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「トレンディドラマ」の変化と終わり 令和版「東ラブ」も「M」も恋物語から夢物語へ

「M」における大げさなキャラ設定やセリフ回しは、よく大映ドラマに例えられる。対する令和版「東ラブ」は、もとは珠玉の金字塔トレンディドラマ。重ねるのはさすがに不作法という声もあるだろう。

 だが往年のトレンディドラマとは、違うものを目指しているように思うのだ。特に若者が憧れるような暮らしや恋愛は、もうドラマの中にはない。フジテレビ「テラスハウス」や、AbemaTVの「オオカミくんには騙されない」「恋愛ドラマな恋がしたい」といった、恋愛リアリティショーの中にあるのではないだろうか。

「東ラブ」にしても「M」にしても、ぐいぐいと恋愛感情を表現するリカや礼香は、結局恋に破れる。選ばれるのはじっと健気にふるまい続ける、さとみやアユだ。まるで北風と太陽の童話のように。

 でもリアリティショーではそうはいかない。相手を静かに思い続ける、いじらしい子が報われるとも限らない。むしろパッと入ってきた、快活で押しの強い美男美女にかっさらわれることも多い。それこそがリアルの残酷さであり、面白さだろう。

 そう考えるならば、令和版「東ラブ」も「M」にも、もはやトレンディもリアリティもない。でも代わりに、不器用でもまじめに生きていれば報われるという夢がある。はりきりすぎも良くないことも見せてくれる。それはがむしゃらに頑張ることに疲れ切った大人たちには、つかの間の安らぎを与えてくれるのではないだろうか。

 現実にひどく疲れ、強い酒をグッと飲んでパッと寝たい夜がある。そんな気分に効くドラマ。「M」の意図的なおどろおどろしさや濃い作りは、「ドラマ界のストロングゼロ」と呼べそうだ。また元祖「東ラブ」でのカンチは「噛めば噛むほど味が出るスルメ男子」と評されていた。令和は令和のカンチの良さを、寝酒のツマミ的に味わうのもいい。

「ラブストーリーとは恋物語、恋について確実なことを一つ言うならば、必ず終わりが来るもの」と、「東京ラブストーリー」原作者の柴門ふみが漫画のあとがきで述べていた。恋も眠りも落ちるもの。2つのドラマは、終わりある恋物語でありながら、終わらない夢物語としての一面も持ち合わせているのかもしれない。

(冨士海ネコ)

2020年5月16日掲載

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