令和のリカとカンチはマサとアユ!? 新「東京ラブストーリー」と「M 愛すべき人がいて」に見るトレンディドラマの変化と終わり

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 あなたはリカ派? それともさとみ派? 1991年の「東京ラブストーリー」を見ていた人なら、この問いが通じるはず。主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」の出だしの「チュクチューン」という音を聞くと、無条件で胸がキュンとなる。ちなみに当時は圧倒的にリカ派が多く、鈴木保奈美がドラマで着ていた紺のブレザーも大流行。一方、さとみ役を演じた有森也実の事務所には、脅迫状まで届いたほどだという。

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 その「東京ラブストーリー」が、29年ぶりにリメイクされた。前作のセリフや演出にしびれていたファンとして、こわごわ見てみた。カンチ役の伊藤健太郎がみずみずしい。リカ役の石橋静河のビッグスマイルも魅力的だ。個人的にはさとみの同僚・トキちゃん役の手島実優の演技がめちゃくちゃいいと思う。しかしなぜか頭にチラつくのは、今季の怪作・「M 愛すべき人がいて」だった。なぜなら設定がすごく似ているのである。令和版「東ラブ」を煮詰めに煮詰めたら、「M」になるのではないだろうか。

 地方から出てきた純朴な若者と、仕事も異性関係も派手な東京の大人との出会い。その都会の大人が若者を見初めて恋に落ち、若者は精神的な成長を遂げていく。カンチとリカしかり、アユとマサしかり。やたらと東京タワーが出てくる画面も一緒だ。

 令和版「東ラブ」では、前作よりも二人の「格差」を広げたように見える。リカの「東京の奔放な女」感が91年版よりも強調されているのだ。男性とのベッドシーンから始まり、オシャレな高層ビルを闊歩する優秀なクリエイターとして登場。上役のメンツを潰すのもいとわない鼻っ柱の強さも描かれ、カンチも敬語で話していた。

「M」での、アユとマサの対比も大きい。上京してきた無名のアユと、東京の音楽シーンで敏腕プロデューサーとして名を馳せるマサ。出会いは大箱ディスコのVIPルームというのも、度が過ぎた都会の華やかさを表す記号である。

 最初はぶつかりあいながらも、徐々に恋に落ちてゆく二人。地方出身の若者が、相手同様に東京の大人になっていく。でもその成長や成功と引き換えに、恋は実らない。悲恋のシンデレラストーリーという骨組みも、2つのドラマは写し鏡のようである。しかし実らなかったゆえに、最後で最高の恋だったという美しい思い出に昇華される。ただの失恋ではなく、運命の恋だったという感傷に貫かれた恋物語なのである。

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