文在寅も高笑い「慰安婦婆さんニセ者」説に踏み込めない保守勢力のジレンマ

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慰安婦を認知症患者として扱って…

 尹美香氏が、過去を振り返るような話し方をしながら、実は李容洙氏に圧力をかけた可能性もある、そういう風に行間を読むこともできる。そう、「私は、あなたが偽物だと知っています。私が潰されれば、あなたも無事ではいられませんよ」。尹美香氏は、そう言いたかったのかもしれない。

 他にもある。正義記憶連帯と尹美香氏が比例代表で当選した「共に市民党」も、「李容洙氏は私たちが差し上げたお金をちゃんと受け取った」、「李容洙氏は記憶がはっきりしていないのだ」、「どうやら心身が脆弱な状態のようだ」と話した。

 朝鮮日報はこれらの発言について、《慰安婦の証言のおかげで社会的地位を築いてきた人たちが、慰安婦を認知症患者として扱っていいのか》と、強烈な皮肉をこめて書いた。2015年、安倍首相と朴槿恵大統領との間で結ばれた慰安婦合意(日韓合意)を「被害者たちの意見が反映されていない」として拒否し続けてきた文在寅政権が、いまその被害者の声をどう思っているのかという、鋭い文章もあった。

 しかし、5月14日時点ではすでに、韓国の保守系マスコミに、そんな鋭さは無くなった。せっかく左派陣営を叩くことが出来るチャンスなのに、聖母にまで疑問を提起するのは、得策ではないと思ったのだろうか。保守系列のどの新聞を読んでみても、《被害者・李容洙と加害者・尹美香の戦い》としか、本件を捉えていない。

 李容洙氏を含めた慰安婦問題への疑問ではなく、左派勢力への攻撃を楽しんでいるだけだ。東亜日報の記事には、《尹美香ではなく李容洙こそが優秀な政治家であり国会議員にふさわしい》という文章まであった。

 軍事政権が崩壊したとき、金大中大統領の左派政権は、右派の軍事政権を悪者にするために、ありとあらゆる資料を発掘、公開した。決して全てではないにせよ、その多くは、鋭く、客観的なものだった。

 今回の件がそういう展開を見せてくれると嬉しいのだが、やはり無理だろうか。もっと根本的なスタンスの変化に繋がる指摘を、韓国の保守系言論に期待していた私もまた、後頭部を殴られたのかもしれない。

シンシアリー
1970年代、韓国生まれ、韓国育ちの生粋の韓国人。 歯科医院を休業し、2017年春より日本へ移住。母から日韓併合時代に学んだ日本語を教えられ、子供のころから日本の雑誌やアニメで日本語に親しんできた。また、日本の地上波放送のテレビを録画したビデオなどから日本の姿を知り、日本の雑誌や書籍からも、韓国で敵視している日本はどこにも存在しないことを知る。アメリカの行政学者アレイン・アイルランドが1926年に発表した「The New Korea」に書かれた、韓国が声高に叫ぶ「人類史上最悪の植民地支配」とはおよそかけ離れた日韓併合の真実を世に知らしめるために始めた、韓国の反日思想への皮肉を綴った日記「シンシアリーのブログ」は1日10万PVを超え、日本人に愛読されている。 『韓国人による恥韓論』など著書は65万部超のベストセラーとなる。5月31日新刊『高文脈文化 日本の行間~韓国人による日韓比較論~(扶桑社)』が発売。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月16日掲載

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