コロナ禍の“暴力”、デビルマンの世界?(KAZUYA)
出口が見えない新型コロナウイルスへの対応ですが、自粛期間も長くなり、人々の心が荒んでいるようです。
自粛中も私たちが食料品をはじめとする物資を購入できるのは、それを運ぶトラックドライバーがいるからに他なりません。しかしそのドライバーに「コロナを運んでくるな」などと罵声を浴びせたりする例があると報道されています。
三重県では、新型コロナに感染した人の家に石を投げて窓を割ったり、壁に落書きをするなどの行為をする不届き者がいたと、三重県知事が明らかにしています。
こうなると永井豪さんが描いた漫画「デビルマン」の世界に近づいている感があります。
デビルマンといえば1970年代前半の漫画で、アニメ化(ストーリーは漫画版と異なる)もされた有名な作品です。主人公の不動明は親友の飛鳥了から、地球に先住していたデーモン(悪魔)が200万年の眠りから復活し、人類から地球を取り返そうとしていると聞かされます。そして対抗するための方法として、自分自身がデーモンと合体し「デビルマン」となり戦う道を選ぶのです。
デビルマンのストーリーは、わかりやすい勧善懲悪ではありません。デーモンが人間に無差別合体し始め、パニックに陥った人間同士が猜疑心から殺し合い、人類が滅亡へ向かう展開になっていきます。人間の姿でも、実は悪魔なのかもしれないという疑いで罪もない人間が殺されていくのです。人間の狂気を描き出したことこそデビルマンの特筆すべき点でしょう。
終盤では明の居候先の牧村家の家族たちが、悪魔特捜隊の本部に連行されたことを知り、明は奪還に向かいます。しかし牧村夫妻は拷問の末、殺されていたのです。隠れていた特捜隊の3人はひたすら自己保身の言葉を並べ、明は「きさまらこそ悪魔だ!」とブチギレ。
そして「悪魔になったんだぞ! これが! これが! おれが身をすててまもろうとした人間の正体か! 地獄へおちろ人間ども!」と口からの火炎で悪魔特捜隊の3人を焼き殺します。この部分は屈指の名シーンです。
人間の恐怖心は、平時には考えられないような暴力的行動を生み出す可能性があります。誰にも存在する精神の悪魔的部分が、恐怖や不安によって顕在化するのでしょう。そうした人々が集団になり、暴力的な行動をより誘発していきます。
日本は災害時でも大々的に略奪が発生するような国ではありませんが、冒頭紹介した投石のように危険な面がないわけではありません。
予防策は、海外と違って罰則を含む強権的なものではなく、自粛要請です。要請に従わない施設には指示をするのと同時に、事業者名を公表することが可能だと法で定められています。確かに感染拡大を阻止するためにはわからないではないですが、補償も不十分なまま営業自粛をと言われても困りますし、経済的な死を意味する場合もあります。しかし公表されたら世論は盛大に叩くことでしょう。まるで国が私刑を推奨しているかのようで、恐ろしい社会です。