コロナ禍で困窮する外国人 ひろがる助け合いの輪

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外国人留学生の日本離れを食い止めるには

 全国的にマスクが不足していた4月半ばに、中国出身の卒業生から5千枚ものマスクが寄贈された日本語学校がある。

「ちょうどマスクが足りない時期だったので、本当に助かりました。マスクももちろんですが、卒業生の皆さんの温かい気持ちが何よりうれしかったです」と言うのは、岡山市内にある「岡山外語学院」の森下明子・副理事長だ。

「同窓会の中国支部から『母校加油!(母校がんばれ!)』『遠く離れていても同じ空の下』というメッセージとともに送られてきたのですが、在校生たちもとても喜んでいました。日頃お世話になっている町内会と医療機関にも寄贈させてもらいました。他にも岡山で起業している中国出身の卒業生がマスクや消毒液を寄贈してくれ、本当に感謝しています」

 岡山外語学院は、定員は436名だが、現在はその半分の200名程度しか学生がいない。なぜかといえば、すでに4月入学予定者に発給された留学ビザを日本政府が感染防止対策として効力を停止したことによる。

「4月入学予定の120名のうち3名しか入国できなかったのです。4月入学予定で入国できた学生がゼロという学校も多いと聞いています。来日できず国で待機している学生のモチベーションを保つためにはどうすればいいのか頭を悩ませ、オンライン授業や動画配信を試行錯誤しながらはじめました」

 また、今後、入国できない状況が長期化したり、学費を払う親や経費支弁者がコロナで失業などしてしまった場合、「留学を諦めざるを得なくなる学生も出てくるのではないかと危惧している」と森下さんは言う。

 別の日本語学校にも話を聞いた。

「当校は、次回の授業料の支払いが6月なので、経済的に差し迫っている学生がいるという話はまだ聞こえてきません。ただ、支払い日が近くなってくれば、そういう相談も出てくるでしょう」。そう話すのは、日本語学校「MANABI外語学院 東京校」の東谷信一郎校長だ。

 現在、すべての生徒に対してオンライン授業を行っているが、春休みに帰国したまま日本に戻れなくなっている学生も30名ほどいるという。

「実は、彼らの中からすでに『退学を考えたい』『別の国への留学を考えている』という連絡が来はじめています」

 留学生の日本離れが始まっているのだ。その理由を、彼らは中国や韓国や台湾と比べて、日本のコロナ対策がお粗末だと考えているから、とする のは拙速だろうが、完全に否定することもできないだろう。

「緊急事態宣言が5月末まで延長されると発表した日に、安倍さんはこれからは『新しい生活様式』に切り替える必要があると言っていましたが、今後は日本語学校としても学生さんにも『日本で勉強したい!』と思わせるコンテンツや日本の魅力を積極的に発信していかなければならないと思っています」

 今後、コロナ禍がいつ収束するかはわからないが、世界各国と同様に、日本も不況になることはまず間違いない。そこからどれだけ早く脱出できるか。そのカギはどこにあるのだろうか。

 哲学者で作家のユヴァル・ノア・ハラリ氏は、コロナ禍を乗り越える方策として、「グローバルな団結を」と説いた。だが、現状を見ると、それは容易ではない。近年、日本に限らず、むしろグローバリズムへの反動が見られており、それをコロナは加速させている、というのが一般的な見方である。人の行き来も当分、以前のようにスムーズにはいかないだろう。

 しかし、だからこそ日本は、意欲ある優秀な若者たちにとって、「学びたい国」「働きたい国」になる努力を怠るべきではないと著者は考えている。ここで紹介したような助け合いの輪が少しでも大きく広がるように、自分にできることがあれば率先して行いたい。

 私自身は吹けば飛んでしまうようなフリーランスだが、願わくば、このコロナ危機をなんとか生き延びて、新しく生まれ変わった日本のことについても記事を書きたいと思っている。

芹澤健介
1973(昭和48)年、沖縄県生まれ。横浜国立大学経済学部卒。ライター、編集者、構成作家。NHK国際放送の番組制作にも携わる。長年、日本在住の外国人の問題を取材してきた。

デイリー新潮編集部編集

2020年5月13日掲載

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