コロナ禍で困窮する外国人 ひろがる助け合いの輪

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 現在、日本には約166万人の外国人労働者がいる。「このコロナ禍で日本人の失業者はリーマンショック後の100万人を上回る」との予想もあるが、より立場の弱い外国人たちはこの日々をどう過ごしているのだろうか。現金給付などの政府の対応がなかなか進まない中、民間レベルでセイフティーネットの輪が広がっている。『コンビニ外国人』等の著書があり、在日外国人事情に詳しいノンフィクションライターの芹澤健介氏が現状をレポートする。

帰国もアルバイトもできない

 GWの連休中、ベトナム人の“駆け込み寺”として有名な「NPO法人日越ともいき支援会」(東京都港区)では、朝から晩まで、緊急物資の仕分けと配送の対応に追われていた。

 寄付で集まった米や野菜などの食料ほか、マスクなどを、要望のあった1600人以上に届けるという。宅配便の配送料だけでもかなりの額になるはずだ。

「主な送り先は留学生や技能実習生です」と言うのは代表の吉水慈豊さん。コロナ禍でアルバイト先や実習先での仕事を失った留学生や技能実習生が増えているのだ。「中には突然の解雇を言い渡されて泣きながら電話してくる子もいますし、授業料が払えずに留学ビザが切れてしまい、帰国もできず、アルバイトもできずに困っている元留学生もいます」。

 物資の送り先リストには、全国各地の住所と名前が並んでいた。多くは一人暮らしのようだったが、中には、同じ住所に8人、9人で共同生活している人たちもいた。

 物資の配送の作業に当たっていたのは、職を失って保護されている技能実習生やボランティアとして手伝いにきていた留学生だ。

 その中のひとり、ホーチミン出身のファン・ホァイ・バオ君(19)は、来日して約1年、東京・両国の日本語学校に通う留学生である。

「アルバイトはココイチとソバ屋さん。ふたつしていましたが、コロナでソバ屋さんが休みになって、働けなくなりました。仕方ないです」

 留学生は「基本的に週に28時間まで」というアルバイトの時間制限があるが、バオ君はこれまで2店舗を掛け持ちしながら時間の調整をしていた。

「ココイチで働く時間を少し増やしてもらいましたが、お金は半分になっちゃった。(月額で)だいたい5万円」

 この状態が続くとキツいと漏らすが、「留学生も10万円(の給付金を)もらえますから、仕事がぜんぶなくなった人よりはいいです」。

 ベトナムは、今回の新型コロナウイルス感染症による死者数がゼロという珍しい国だ(5月11日時点)。現地の両親は東京で暮らすバオ君を心配している。だが、彼自身は留学を続けるつもりだ。

「専門学校か大学か、まだわかりませんが、もっと日本で勉強したいと考えています」

祖国のロックダウン中にビザが失効

 ベトナム人以外でも助け合いの輪は広がっている。「グローバル ホーム ネットワーク」(東京都新宿区)という不動産店を営むネパール人のシヴァ・パウデルさんは、生活に困窮しているネパール人に無料で米や豆、マスクなどの配送をはじめた。

「大使館やNRNA(海外在住ネパール人協会)にも相談していますが、今のところは私のポケットマネーで対応しています。とりあえずは30万円。今あるお金はすぐになくなってしまうでしょうが……」

 ネパールの大学を卒業して、高校教師として数学や物理を教えていたパウデルさんが留学生として来日したのは2005年。28歳のときだった。すでに結婚していたが、日本語を覚えて日本で働きたいと思った。日本語学校や専門学校に通いながら、クリーニング店やスーパーのチルド工場、レストランなどでアルバイトをした。その後、不動産店に勤め、2015年に独立。経営は順調だった。

 例年であれば、春先は不動産店としても稼ぎ時だ。「毎日35人とか40人とかお客さんが来て、月の売り上げも500万円くらいありますが、今年はぜんぜんダメ。100万円もいかない。仕事はヒマ。でも、今はボランティアとか、寄付とか、自分ができることをやらなければならないときですね」

 すでに100件近く、米やマスクなどの物資を送った。

 部屋探しの問い合せが減った代わりに、アパートの更新料の支払いに関する問い合わせが増えた。

「コロナで働けなくなってお金がないです、どうしたらいいですか、と。もちろん、アパートの大家さんもビジネスですから、無理にお願いはできませんが、支払いをすこし待ってくれる、割り引きしてくれるという場合はそれを連絡します。そのほかにもいろんな相談があります」

 不動産とは関係のない「ビザが切れてしまった」という相談も受ける。顔が広いパウデルさんを頼ってくる人も多いのだという。

「ネパールは3月末からロックダウンしていますが、その間、ネパールに帰れず、ビザが切れちゃった人もいる。入管で滞在延長はしてもらえますが、延長期間は働くことができない。だから仕方なく部屋に引きこもっているが、明日から食べるものがない。そういう人から連絡がくればお米だけじゃなく、小額ですが、お金も送るようにしています」

 コロナ騒ぎがいつまで続くかわからないが、「今、自分にできることをやるだけです」

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