消えない「金正恩」の影武者説 重体報道と20日間の動静不明が意味するもの
手術は事実?
韓国の通信社・聯合ニュースは5月2日、「[速報]金正恩氏が公開活動 肥料工場の完工式出席」と報じ、YAHOO!ニュースには午前6時14分に配信された。
***
記事の見出しと本文は一言一句、全く同じだった。要するに金正恩・朝鮮労働党委員長(36)の“出現”を1分1秒でも早く伝えたかったのだろう。
それだけ彼の健康状態が世界中の注目を集めていたわけだ。改めて北朝鮮の報道を確認しておこう。
まずは朝鮮中央通信が2日、正恩が完工式に出席したと報道。テープカットを行ったり、工場を視察したりする姿を収めた写真も配信した。
また朝鮮中央テレビも完工式の壇上に向かって、屋外を歩いていく正恩の姿などを動画で放送した。
ご存知の通り、20日間も正恩の動静は不明だった。4月11日に党中央委員会政治局会議に出席した姿が報じられたのを最後に、12日の最高人民会議は欠席。15日には祖父・金日成(1912~1994)の生誕記念日だったにもかかわらず、全く報道がないという“異常事態”が発生していた。
そして4月20日にはデイリーNKが、正恩は心血管系の手術を受けたと伝え、翌21日にはアメリカのCNNが手術後に重体となった可能性があると報じたのだ。
ところが、その正恩が肥料工場に颯爽と登場したという。デイリーNKやCNNの記事は誤報だったのかと呆れた向きも多いだろう。
ここでデイリーNKの名誉のために付け加えれば、同社は「正恩は手術を受けたが、その後の経過は良好」だと報じていた。
4月20日に掲載された「金正恩氏が心血管疾患で手術か…12日、国内の専用病院で」の冒頭をご紹介しよう(註:デイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)。
《北朝鮮の金正恩党委員長が最近、心血管系の手術を受け、現在も地方の特閣(別荘)で治療を受けていることが20日までにわかった。術後の経過は良好だという》
あくまでも重体説を報じたのはCNNだった。とはいえ、BBCは5月5日、「【寄稿】 金正恩氏の死亡説 うわさはどう生まれ、どう拡散した?」との記事を掲載した。健康不安説でさえも完全な誤報だったと断じるメディアも、決して少なくない。
その一方で、「肥料工場の正恩は替え玉だったのではないか」という記事も目立つ。いくつかの報道から、見出しだけをご紹介する。出典は全て電子版だ。
◆《金正恩氏報道 ネットで「影武者説」独特髪形「なんか違う気が…」》(デイリースポーツ:5月2日)
◆《金正恩「20日ぶりに登場」…「影武者説」も=トランプは“死亡説”言及を避ける》(WoW!korea:5月2日)
◆《正恩氏「20日ぶりに公の場」報道の違和感 脱北者議員「死亡を99%確信」 「影武者」存在の指摘も》(夕刊フジ:5月3日)
◆《金正恩氏「公の場に姿」もネットで疑問 完全に否定できない影武者説》(東スポWeb:5月10日)
[1/3ページ]