コロナでがん治療が延期、感染者受け入れで収益減 もうひとつの「医療崩壊」

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「がん研有明病院」は看護師1人の感染で手術の8割をストップ

 医療従事者への感染を防げば、院内感染も広がらず、崩壊は食い止められる、はずだった。だが、コロナ禍が長引くにつれて、感染していない人々を巻き込んだ全く別種の医療崩壊の足音が忍び寄っている。

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「果たしてスケジュール通りに治療が進められるのか、不安で仕方がありません」

 そう語るのは、がん研有明病院で治療をしている男性患者だ。

 この患者が不安な心情を吐露するのも無理はない。1日最大40件ほどの手術を行っていた同病院では4月20日に看護師1人の感染が発覚したことがきっかけで、現在、全体の8割に及ぶ手術を行わない方針を打ち出している。たかが1人、されど1人、というわけだ。
(4月29日に縮小体制は解除。詳しくは同院の発表情報をご確認ください https://www.jfcr.or.jp/hospital/information/covid-19/index.html)

「本来であればすでに放射線治療と抗がん剤治療を開始している時期でした。しかし、コロナの影響だと医師から明言されないものの、すでに治療は5月以降に延期となっていて、今後、治療の日程が決まってもさらに延期になりはしないか。私は、コロナよりがんの方が怖い。がんはいまも刻一刻とわが身を蝕んでいます。できる限り治療を優先してほしいのが本音です」

 がんで死亡する日本人は年間約38万人。人数では圧倒的に少ないコロナの感染者が多くのがん患者の命運を左右するという皮肉な事態が起きているのである。

 別のがん治療専門病院でも、医療機関からの紹介状があったとしても、緊急度が高くないものについては、断ることもあるという。

 国際医療福祉大学の松本哲哉教授が指摘する。

「程度の差こそあれ、多くの病院で日常的な治療が延期あるいはストップしていますし、手術や救急にもしわ寄せがきています。例えば心筋梗塞を起こして、平時ならすぐに病院に入れるのに、新型コロナの影響で救急を閉じる病院が増えているため、複数の病院に断られて、手遅れとなってしまう事態も起きているのです」

 問題はこれに留まらず、病院の“経営”も直撃している。

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