コロナ禍のトラブル 朝日新聞も絶賛の「キャバ嬢社長」が従業員に給料未払い

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一度は謝罪した桜井さん

 少し間をおき、男性スタッフは「休むことで契約の出勤日数に達しない場合、その分は当日欠勤と同じ扱いにします」との返事を送信してきた。つまり場合によっては罰金を科すというわけだ。これを「おかしい」と考えたヒトミさんは、桜井さんに直接、連絡を取ることを決めた。

 店で姿を見ることが珍しくないとはいえ、やはり社長となれば雲の上の存在だ。携帯の番号も知らなければ、LINEでつながっているわけでもない。そこでヒトミさんは公式InstagramのDM(ダイレクトメッセージ)を利用することにした。

「自分の身だけでなく、家族の健康も守るために休みたいと相談しました。それでも駄目というのは、いかがなものでしょうか」というメッセージを送った。だが、返事はなかった。一方、担当の男性スタッフにもLINEで同じメッセージを送ると、こちらは「みんな出勤しています。不安なのは男性スタッフスタッフも同じです」と返信があった。

「そこで、4月12日まで休むと、罰金はいくらになるのか訊きました。すると男性スタッフからは『4月12日まで来ないということでいいのですか』というメッセージが送られてきただけで、何も答えてくれませんでした。この時、既にお店に来られるお客さんの数は減る一方でした。私は色々と考えた結果、『新型コロナウイルスの影響で売上が作れませんし、不安なのでお店を辞めたいです』と伝えました」

 今回は「分かりました」と返信があった。ヒトミさんは契約書に「辞める前は1か月前に申告」と記載されていたのを思い出し、「1か月は働く感じですか?」と質問した。すると「いえ、もう来なくていいです」と突き放された。

 驚いて給与について質問すると、「計算が終わっていないので、お待ちください」との返信だった。この時、ヒトミさんは「自分の辞職願が受理されたのではなく、店から解雇された」と受け止めたという。すると2日後に、桜井さんからDMの返信が届いた。

 そこには「コロナで休みたい人は罰金を科しません」といった内容のことが書かれていた。ヒトミさんは自分が解雇されたことを桜井さんは把握していないのではないかと思い、男性スタッフとのLINEのやり取りを画像データにして桜井さんに送った。すると「私の伝達不足で従業員が普段通りの対応をしまっただけです。私の責任です。すみません」と謝罪の返信が届いた。

 そして4月16日、この日は3月分の給料日だった。ヒトミさんは歌舞伎町まで取りに行った。店内にはヒトミさんの他に4人のキャストがいた。全員、店の対応には不満を持っていたようで、ある女性は「もう辞める」と明言していた。

「1人ずつ部屋に呼ばれ、私は最後でした。部屋でお給料を受け取り、封筒の中にある明細を見て驚きました。時給1267円で計算されていたのです。後で分かりましたが、これは東京都の深夜時間帯における最低賃金の時給なのです。夜のお店、しかもキャバクラでこの時給はあり得ません」

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