コロナ禍のトラブル 朝日新聞も絶賛の「キャバ嬢社長」が従業員に給料未払い
新型コロナの問題を悪用
この投稿は本当なのだろうか。桜井さんの経営する「花音」に勤務し、「時給を不当に引き下げられ、自分の意思に反して解雇された」と訴える女性に話を聞くことができた。店での源氏名はヒトミだった。
「私だけではなく複数のキャストが、時給を一方的に引き下げられるなど、同じ被害を受けています。つまり組織ぐるみで給与を意図的に引き下げたり、キャストの意に反した解雇を行ったりした可能性があると思っています。結局、野の花さんは新型コロナの感染拡大を悪用し、人件費を削減しようとしたのではないでしょうか」
そもそもヒトミさんは、どのような経緯で「花音」に務めるようになったのか。きっかけは桜井さんのYouTubeを閲覧したことだったという。
「たまたま野の花さんの動画を見ると、そのトークに魅了され、ファンになりました。私も銀座の店で働いた経験がありましたが、野の花さんも過去にはキャストの1人として働き、今も店を経営しながらキャバ嬢として接客を続けています。私たちキャストの気持ちも深く理解してくださるだろうと考え、野の花さんの下で働きたいと思ったのです」
YouTubeでは求人募集も行われており、応募用のメールアドレスも記載されていた。さっそくヒトミさんがメールを送ると、すぐに面接が決まった。だが、「果たして採用されるのだろうか」と不安のほうが強かったという。
「店の立地で、お客さまの雰囲気は変わります。評価されるキャストのイメージも、場所によって変わります。私は歌舞伎町で働いたことはなかったので、それが不安でした」
実際に面接が始まると、“経験者”であり“即戦力”かどうかを問う質問が印象に残ったという。例えば「前のお店のお客さんを、どれくらい連れてこられますか?」という具合だ。
「最初の1か月は時給が保証されるのが業界の慣例です。その後は売上に応じて、時給が変わります。ネットで『歌舞伎町の相場は時給5000円から1万円』と書いている記事を読んでいたので、面接では時給6000円を提案しました」
面接後に体験入店も行われた。やはり銀座とは雰囲気が異なったが、ヒトミさんは仕事をそつなくこなし、終わると採用と告げられた。2月19日に正式入店となり、以前の客も応援に駆け付けるなど、手応えも感じていたという。
「2月29日の勤務を締め日とし、最初の給与が支払われました。明細では、58時間50分を働いたことになっています。保証時給6000円で基本給が35万1000円。これに指名や同伴出勤などのバックが加算され、所得税などが差し引かれて31万4000円が初月給でした」
3月も勤務を続けるうち、次第に新型コロナの問題が大きくクローズアップされてきた。ヒトミさんも欠かさずニュースをチェックしていた。そして30日の夜、小池百合子都知事が「4月12日まで、ナイトクラブなどは営業を自粛してほしい」と要請した。
「花音は営業を続けているので、私は担当の男性スタッフにLINEを使って『4月12日まで、お客さまの来店予定がある日以外は、お休みしていいですか』と相談しました。理由を訊かれたので、『都知事が営業自粛を呼びかけました。お客さまを誘いづらいですし、私も新型コロナのリスクを避けたいです』と説明しました」
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