新型コロナ重症例でも効く科学的根拠は? 「レムデシビル」とその次の候補薬について
厳しい状況から救えるか「アクテムラ」
増富:前述した「RdRP」を標的とするお薬は、感染初期の早い段階から使用することでウイルスの増殖を抑え込むという理屈でした。一方で、アクテムラは重症化して全身状態が厳しい状況から救える可能性は十分にあると思います。新型コロナウイルスによる死亡例は「サイトカインストーム」という、免疫応答の過剰反応による多くの臓器不全が原因と考えられています。
現在行われている、基礎研究と重症COVID-19患者を対象にした臨床試験の結果を見守る必要がありますが、別の疾患で「サイトカインストーム」からの「救世主」となった実績のあるお薬ですから、作用機序から考えても特に重症化してしまった患者さんには効果の可能性は十分にあると思います。
大場:アクテムラは、免疫応答で発動される炎症性サイトカインという物質の中でも、IL(インターロイキン)-6を標的として抑える薬ですね。また、血液がんの免疫療法としてCAR-T(キメラ抗原受容体導入T細胞)療法というものが注目を浴びていますが、その重篤な副作用である「サイトカイン放出症候群」にも使用される重要な薬です。
軽々しく免疫といっても、免疫応答の「過剰反応」はとても怖い病態だということです。それに似た現象が、COVID-19重症化患者にも起きているわけですね。
本来、ゴールとしてもっとも大切な重症化患者を救い、死亡者数を極力減らすという意味では僕も期待している薬です。もちろん、レムデシビルの開発も、対象が中等症~重症の患者さんが中心ですから、試験結果の全貌が早く明らかになって、効果が証明された場合にはいち早く困っている患者さんのもとに届いてほしいと願います。
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