新型コロナ重症例でも効く科学的根拠は? 「レムデシビル」とその次の候補薬について
C型肝炎ウイルス治療薬までも
増富:先に述べた科学的根拠を基に考えれば、アビガンやレムデシビルと同じ作用メカニズムで、C型肝炎ウイルスの「RdRP」を標的にしたソホスブビルはどうだろうかと思います。いまや、C型肝炎治療は画期的時代を迎えていて、感染ウイルス量をゼロにすることができる時代ですからね。それを応用できたらいいのにと個人的に思います。
ただ、これは、レムデシビルと同じギリアド社が開発しているお薬なので、現時点で候補として名前が挙がってこないところをみると、おそらく、企業内部の判断で「効果の見通し」がないのかもしれません。
大場:理論上、C型肝炎ウイルス治療薬までも可能性があるという話は面白いですね。新型コロナウイルス感染拡大の震源地となった中国・武漢。そこにあるウイルス研究所では、すでに培養細胞レベルでいろいろな薬の新型コロナウイルスに対する効果が調べられていて、確かにC型肝炎治療薬であるリバビリンも入っていました。しかし、中でも優れていたのが「レムデシビル」とかつて抗マラリア薬として使われていた「クロロキン」のふたつ。
増富:クロロキンは実際どうだったのですか?
大場:米国トランプ大統領が「ゲームチェンジャーの可能性」を公言するほど、クロロキンは治療薬として大きな期待が寄せられていました。しかし臨床試験をやってみると、効果がみられないどころか、重篤な心臓への副作用が問題となり、抗菌薬と併用すると致死率も高くなることがわかりました。
要するに、実際にヒトに投与する臨床試験をやってみると、実験室での理屈が当てはまらないことが多々あるということです。これはがん治療薬でも同様な話。ほかにも色々な既存薬が候補として取り沙汰されていますよね。
増富:新型コロナウイルスが感染する時にとり付くヒトの細胞側の受容体を狙うとすれば、日本でも既に多くの患者さんが服用している一部の降圧薬なども可能性があると言われています。
あとは、お薬の作用機序(人体に対して働くメカニズム)を考えても説明が可能なものといえば、膵炎治療で使用されているフサン(一般名ナファモスタットメシル酸塩)や関節リウマチ・膠原病に使われているアクテムラ(一般名トシリズマブ)も有望でしょう。
大場:アクテムラの可能性についてもう少し教えてください。
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