「グッとラック!」が岡江久美子さん追悼報道で失敗したと言われる理由

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お宝映像が無駄に!?

 女優の岡江久美子さん(享年63)は4月23日、新型コロナウイルスによる肺炎で死去した。夫の大和田獏(69)と娘の大和田美帆(36)のFAXコメントによると、午前5時20分のことだったという。

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 テレビ局や新聞社などは、同じ日の午後3時過ぎから電子版の速報で、余りに早すぎる死を報じた。

 世間に衝撃が広がったことは言うまでもなく、報道も過熱する。マスコミは、その日の夕方から大々的に報じ、翌24日を迎えた。民放キー局のスタッフにとっては、まさに正念場が訪れたことを意味した。

 特に「グッとラック!」(TBS系列・平日・8:00)に多くの注目が集まっていたという。岡江さんとTBSは深い縁で結ばれていたからだ。

 そもそも岡江さんは1975年、TBSドラマ「お美津」での主演で芸能界デビュー。91年から8年間続いた人気ホームドラマシリーズ「天までとどけ」では、13人の子を持つ母親を演じて当たり役となった。

 さらに96年から始まった「はなまるマーケット」で司会を務めたことは有名な話である。

 当時、「TBSビデオ問題」が大きな批判を浴びていた。坂本堤弁護士一家殺害事件の被害者、坂本堤氏(1956~1989)のインタビュー映像を、放送前にオウム真理教の幹部に見せたことが明らかになり、「殺害事件の発端となったのではないか」と大きく問題視されたのだ。

 同じTBSの「筑紫哲也 NEWS23」で、キャスターの筑紫哲也(1935~2008)が「TBSは今日、死んだに等しいと思います」と番組中に批判したことを、今も鮮明に憶えておられる方も多いだろう。

 このためワイドショーの放送を廃止。午前8時30分から放送されていた「モーニングEye」(1984~1996)は打ち切りとなり、報道色の全くない「はなまるマーケット」がスタートすることになった。

 MCを務めた岡江さんと薬丸裕英(54)の双肩には、TBSの浮沈がかかっていたと言っても過言ではなかったはずだ。

 それが蓋を開けてみると、2014年まで、17年半も続く人気番組となった。TBSにとって2人は、いわば救世主。TBSは他局より圧倒的に深い関係を築いており、同じ放送枠の「グッとラック!」はどんな追悼番組を放送するのか注目されていたという。

 他局のスタッフは、「TBSさんにはお宝映像もたくさんある」ため、視聴率でも勝てるはずがないと思っていたという。ライバル民放キー局の関係者が振り返る。

「『グッとラック!』は去秋の放送開始以来、視聴率が低迷していますが、この日はさすがに1位か2位の数字を勝ち取るチャンスだったはずです。結論から先に申し上げますと、視聴率は5%と、この番組にとっては高い視聴率を記録しました(編集部註:ビデオリサーチ調べ、関東地区)。ところが社会的関心の高い訃報だったからか、他局のライバル番組も軒並み視聴率が上がりました。結局、『グッとラック!』の“定位置”である視聴率4位で終わってしまったのです」

 この関係者は、「お宝映像を流してはいましたが、冒頭30分で失敗してしまいましたね」と振り返る。

「番組の幕開けで凡庸な印象を与えてしまったと言わざるを得ません。その原因は、素材の収集や取材に問題があったわけではないのです。ひとえに素材をどう活かすか、構成と演出の責任です。訃報ということを意識しすぎて、石橋を叩きすぎたと言うべきでしょうか」

 では、24日の「グッとラック!」は、冒頭の30分で何を流したのだろうか。内容を振り返ってみよう。視聴した放送担当の記者が言う。

「午前8時の幕開けでは、『はなまるマーケット』の岡江さんと薬丸裕英さんの掛け合いからスタートしました。特に8時15分からはNHKで連ドラの『エール』が放送されます。『グッとラック!』も意識していたようで、ちょうど15分から『はなまる』の初回放送の冒頭部分を振り返りました。特に16分からはオンエア直前の未放送部分という、まさにお宝映像をぶつけていました」

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