【新型コロナ】重篤な肺炎でも放置された男性の告白 「保健所への恨みは消えません」

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“死ぬかもしれない。助けてください“。悲痛な叫び声に対して、返ってくる言葉は“耐えてください”のみ。病床からのSOSが届かないのだ。こんな異常事態がこの社会で起きると、誰が想像したであろうか。

 新型コロナウイルスに感染。「重篤な肺炎」と診断されながらも、入院することなしに、独りで闘い抜いた男性がいる。

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 港区在住の会社経営者・別府達哉さん(42・仮名)が体に異変を感じたのは、3月20日のことであった。

「仕事から帰ると熱っぽさを感じて。最初は風邪をひいてしまったくらいに考えていました。しかし、翌日も、翌々日も熱は下がりません。測ってみると38・5分もある。周囲に相談すると『コロナかもしれないから、早くPCR検査をした方がいい』と言われました」

 新型コロナへの感染が疑われた場合、真っ先にすべきことは、最寄りの保健所の「帰国者・接触者センター」への連絡である。

 彼もインターネットでそれを確かめ、3月23日頃、まず「みなと保健所」の窓口に電話を入れたという。

「電話口に出た担当者はつれない対応でした。『その程度の症状では厚生労働省が定めた基準に達していませんので、検査は受けられません。自宅で様子をみてください』と。咳などの肺炎を疑われるような症状がないとダメだというのです。もっとも、その頃は自分でも間違いなくコロナだと思っていたわけではありません。ただ、万一陽性だったら周囲に迷惑をかけてしまう不安があった。何とかならないかと食い下がったのですが、取りつく島もありませんでした」

 仕方なく自宅で療養を続けたが、熱は4日、5日たっても下がらない。

「熱にうなされ、もうろうとして、食事どころか水を飲むのもしんどい状況が続きました。こんなに高熱が続くなんて生まれて初めてのことでした。私は糖尿病の持病を持っています。報道では持病を持っている感染者は症状が悪化し、死に至るとも言われていました。そこで、連日、保健所に電話を入れ、持病についても明かしたのですが、『自宅で療養を続けてください』の一点張りです。彼らは医師でもないので、マニュアル通りにしか対応してくれないのです。病院にも行こうと考えましたが、知人は『風邪と診断されて帰らされるから意味ない』という。ネットには『解熱剤を飲むと死亡するケースがある』とも書いてあったので薬にも頼れず、ひたすら自宅で熱が下がるのを待ちました」

 地獄のような1週間が過ぎると、ようやく熱が37度台まで下がった。だが、ほっとするのも束の間、新たな症状が出始めた。咳である。

「徐々に始まり、やがて息を吸うだけでむせ返るようになるくらいに。それが四六時中続くのです。苦しいなんてもんじゃないです。その時はもう本気で死ぬかもしれないと思いました。だから藁にもすがる思いで、2、3日あけていた保健所への連絡を再開したのです。咳の症状について話すと、初めて担当者がちゃんと話を聞いてくれるようになりました」

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