「コロワイド」の「大戸屋」買収計画 コロワイド社長の発言が大戸屋ファンを失望させた訳

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

カット野菜なんて変わらない

「これまであまり表に出る人ではありませんでしたが、イメージ戦略の一環だったのかもしれません。ただ、これが大失敗で……」(同)

 同じ飲食業ながら、2つの会社はまったく考え方が異なることが露呈したのだ。コロワイドは、調理を徹底的に合理化し、セントラルキッチンで下ごしらえしたものを店舗に送り、最終調理のみで客に出す。番組ではテレビ初公開という同社のセントラルキッチンも撮影まで許可した。そして、いまだ店内調理にこだわる大戸屋に対して、こう言い放った。

野尻:お店でやっても、例えば、セントラルキッチンでやっても変わらないもの、カット野菜なんて変わらないんですよ。

 一方、大戸屋の濱田寛明取締役はこう反論した。

濱田:店内調理にずっとこだわってやってきておりますし、それがお客様にとってのおいしさに繋がっている。様々な経営課題というのはありますけれども、私どもにとって、その課題を解決する処方箋はセントラルキッチンにはない。

「大戸屋を創業した久実氏がカリスマと呼ばれたのは、セントラルキッチンを取り入れずにチェーン展開したことです。誰だって、セントラルキッチンにすれば、どの店でも同じ味を出すことができて効率的だと思いますが、やはり鮮度は変わってきます。あえて難易度の高い店内調理を徹底して成功させたことで、カリスマと呼ばれたのです。にもかかわらず、コロワイドの野尻社長は味など変わらないと発言してしまいました。大戸屋に通うお客は、店内調理にこだわっている店であることを知っている人が多いと思います。千切りキャベツひとつ取っても、店できざんだばかりのものと送られてきたものでは違いますからね。それにしても飲食チェーンの社長が、そんなことも分からないとは……」(同)

 SNSにも同様の声が広まっている。

《えー?カット野菜と店内調理は変わらない?セントラルキッチンで調理すると大戸屋がファミレスと同じになってしまうよ。コロワイドのお偉いさんセンス無いと思う》

《コロワイドの野尻公平は何も分かっていない。他の店ではなく「大戸屋」に行きたい!と思う客は何に惹かれているのかを。セントラルキッチン方式ならファミレスと同じ。二度と行かない。》

《野尻社長は「カット野菜などはどちらでも同じ」と発言。鮮度が違うわアホ!店内調理だからこそ大戸屋のファンなんだよこっちは!》

《大戸屋頑張って。私利私欲のコロワイドに負けるなっ!》

《コロワイド社長、喋り方…敵対的買収、失敗しろ!》

 どうも、大戸屋ファンを敵に回してしまったようである。ついでに言えば、「手作り居酒屋 甘太郎」は“手作り”ではなかったのだろうか、という疑問も……。むろん、野尻社長だって、大戸屋を心配しているようなのである。こうも語っていた。

野尻:大戸屋さんというのは、国内の店舗でいうと約200店舗、全体の3分の2くらいはフランチャイズなんですね。コロナウイルスの影響というのは、我々以上に相当厳しいんですね。このまま放っておけば、店を閉める、止める、離脱するオーナーが増えると思うんです。それを防いでいかなきゃいけない。

 だから買収するというわけか。

「これもちょっとおかしな言い分です。飲食業はどこもコロナの影響を受けていますが、中でも大きく売上を落としているのは夜の居酒屋などです。大戸屋の場合、コロナ以前からメニューが定食ばかりで夜の売上が伸びていないことがむしろ問題でした。コロナの悪影響は甘太郎や牛角などのほうが大きく、7日には居酒屋業態で約400店舗の休業を発表したばかりです。ましてやコロワイドは買収に次ぐ買収で1000億円以上の借り入れがあり、自己資本も低い。3月の月次を見ると、前年同月比で大戸屋(全店舗)は21%のマイナスですが、コロワイドは全業態で3割近く減らしています。このままコロナによる休業が長引けば、大戸屋の心配をしている場合ではないと思います」(同)

 株主総会まであと2カ月である。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月4日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。